ホンマに医療崩壊させんと五輪できんの?「精神論」だけで暴走せんといてや

[ 2021年6月23日 08:00 ]

鳥内秀晃氏
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 【名将鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】今から76年前、日本は太平洋戦争で負けたやん。その敗因について、昭和天皇が皇太子(当時、現明仁上皇)への手紙で明かされていて、その一文を紹介するわ。

 「我が軍人は 精神に重きをおきすぎて 科学を忘れたことである」(高橋紘著「象徴天皇」岩波新書、一部抜粋)

 五輪開催を巡る政府や組織委員会の言動を見とったら、科学的な根拠が必要という教訓が生かされてへんことが分かるわ。プロスポーツの観客はどっから来てるとか、その時期に熱中症などで救急車がどんだけ出動してるかとか、ちゃんとデータ調べてんのかな。実際はエビデンスなしに「安心安全」を繰り返すだけやろ。精神論だけやったら、戦争に負けた当時と何も変わってへんわ。

 結局な、日本のリーダーって、「絶対に~はない」って考えに基づいて動いとるから、すべてに出口戦略がないねん。それは原発にも言えることで、第1次政権時代の安倍首相が事故の可能性を完全否定した結果が「3・11」やろ。福島に住んでいた人はいまだに元の生活に戻られへんし、廃炉作業も遅々として進んでへん。事故の最終処理さえでけへんのが、この国のリーダーやねん。

 日本って国は、物事がうまくいってる時はええねんけど、非常事態が起きたら後手後手に回ってしもて、対応できひん。アメリカは逆で「絶対はない」って考え方でやってるから、危機管理の準備がしっかりできてる。雲泥の差やな。

 ワクチンや重症者のベッドを増やすのかて、厚生労働省だけでやっとった昨年とちごて、総務省が口出しするようになって急ピッチで進み始めたやん。総務省の言うこと聞かんと、地方交付金などを減らされるから、自治体は必死や。普段から「国民の生命と財産を守る」っていうんやったら、何で政府は昨年から、それをやらへんねん。今みたいにやっとったら、救えた命もいっぱいあったはずやのにな。

 五輪に話を戻すと、来日した中に1人陽性者のいたウガンダ選手団への対応を見とったら、不安だらけやな。テニスの全豪オープンはたった1競技であれだけ厳格なプレーブックやったのに、何十種目もある五輪で、有観客になったら、ものすごい人数が集まって危険やいうこと分からへんのかな。ホンマにこんなんで、医療逼迫(ひっぱく)させんと開催できんの?頼むで、ホンマ。 (関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

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2021年6月23日のニュース