データで見る八村の第36戦 哀愁のサンフランシスコ? 元エリート選手の現在

[ 2020年3月2日 14:42 ]

3点シュートを決めたウィザーズの八村(AP)
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 ウィザーズがウォリアーズのホーム(オークランド&サンフランシスコ)で勝ったのは2014年1月28日以来。そのときのスコアは88―85で、この日34得点を稼いだブラドリー・ビール(26)は6年前もチーム最多の20得点を記録していた。

 ウォリアーズは左手を骨折して4カ月も戦列を離れているステフィン・カリー(31)が復帰するのでは?と見られていたがベンチ登録は見送り。ウィザーズにとってはリーグ屈指のシューターがいなかったことで、好調ビールの存在を考えれば勝って当然の試合だったかもしれない。

 ただし先発選手の“過去の経歴”を見ると上回っていたのはウォリアーズ。カリー不在とは言え、クロアチア出身のドラガン・ベンダー(22)とワシントン大出身のマーキース・クリス(22)は2016年ドラフトの全体4番目と8番目の指名選手で八村とは生年月日が年度的に同期でもある。さらにティンバーウルブスから移籍してきたアンドリュー・ウィギンス(25)は2014年ドラフトの全体トップ指名選手だ。一方、ウィザーズのドラフトでの「ひとケタ」指名選手は3番目のビールと9番目の八村の2人だけ。エリート選手の“枚数”では劣っていたのである。

 八村とマッチアップしたベンダーは213センチ。NBAのドラフトで指名されたときには同じクロアチア出身のトニー・クーコッチ(元ブルズ)や、ドイツ出身でその後マーベリクスの大黒柱となったダーク・ノビツキーの再来か?などと騒がれたものだった。しかしNBA4シーズンですでに所属チームは3つ目。得意だったはずの3点シュートはすでに“武器”とは言い難く(ウォリアーズでの5試合では成功率25・0%)、身長で10センチ低い八村の執ようなマークもあってこの日3本すべて外してしまった。出場19分で8得点と10リバウンド。攻守両面でチームの歯車となった八村とは対照的に最後まで存在感を示せなかった。

 クリス(206センチ、109キロ)もすでに4チーム目。マイナーのGリーグとの「2―WAY契約」でなんとか生き残っている状態だ。ウィザーズ戦では30分の出場で12得点、13リバウンド、2ブロックショットを記録したが、ターンオーバーはボールの保持が多いガードでもないのに5回。サンズ時代の2シーズンでは124試合に先発しているが、何度も与えられたチャンスをものにできないシーズンが続いている。

 ウィザーズ戦で27得点をマークしたウィギンスはリーグ屈指の得点力を持っている選手だが、ディフェンス面での評価が高くない。ティンバーウルブスに在籍していた1月11日のロケッツ戦から、この日のウィザーズ戦まで出場21試合で1勝20敗。どちらのチームも故障者続出で不振ながら、そこを救うのが“元ドラ1”選手の役目だとも思うのだが、年俸2750万4630ドル(約29億7000万円)の高額契約が今はかすんで見える。

 サンフランシスコに広がっていた光景は、NBAのきびしさを物語る一面でもある。どんなに上位で指名されてもそこから伸びていかなければNBAではすぐに“居場所”がなくなっていく。ウォリアーズではまもなくカリーが復帰し、膝のじん帯断裂で今季の出場を見送っているクレイ・トンプソン(30)も来季は復帰する見込み。しかも西地区最下位という現在の順位を考えると、6月末のドラフトのかなり上位で有能な新人を指名できる権利を確保することが濃厚だ。八村の前で敗れ去ったベンダー、クリス、ウィギンスはどこまで危機感を抱いているのか?ウィザ―ズの「勝利原稿」を書きながらも、少々さびしい気持ちになってしまった。(高柳 昌弥)

 

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