ラグビー日本代表 チームソング、GPS、ドローン…7つの秘密兵器携えビクトリー・ロード行く

[ 2019年8月13日 09:00 ]

ラグビーW杯日本大会9・20開幕

ラグビー日本代表の宮崎合宿の練習最終日に手拍子をしながらチームソングを歌う選手たち
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 【W杯への鼓動】W杯前哨戦のパシフィックネーションズ杯(PNC)で全勝優勝を果たした日本代表。特に初戦でフィジーに完勝するなど、戦前の予想を上回る結果を残した。背景には2月の合宿開始からチームの強化を手助けした、物心両面の「7つのアイテム」がある。

 ♪ビクトリー・ロード この道 ずっと 行けば 最後は 笑える日が 来るのさ ビクトリー・ロード

 プロップ山本幸輝(ヤマハ発動機)の独唱で始まるチームソングがお披露目されたのは、都内で合宿中だった3月1日。当時は総勢60人以上を数えた代表候補一のムードメーカーが、1971年に発表された米歌手ジョン・デンバーさんの往年の名曲「カントリー・ロード」のメロディーに乗せて歌詞を作った。日本ではジブリ映画「耳をすませば」のエンディングテーマとしても有名な、あの曲だ。

 元々のきっかけは、W杯直前の4年前にある。SH田中(キヤノン)らが酒席の最中、チームソングを作るアイデアを思い付き、いわば“ノリ”で制作された。原曲はボブ・マーリーの「バファロー・ソルジャー」。日英両方が入る歌詞を担当したツイ(サントリー)は「飲み過ぎて酔っぱらっていた」と当時を思い出しつつ、今回のチームでも「選手が考えたが、コーチを含めて歌うことで結束力が高まる。W杯に向けて非常に大事」と“ONE TEAM”に役立っていることを強調した。

 リーチ主将(東芝)から作詞を指名された山本は「歌詞の通り、信じて進めば笑える日が来る、という思いを込めた」という。まだ道半ばながら曲の通り、日本は勝利へと一歩一歩前進している。

 ≪このほかのアイテム≫

 ▽GPS カーナビに搭載されるGPSがラグビーで活用されるようになって久しい。選手は小型機器を身につけて練習や試合でプレー。走行距離や走る速さを計測するのが主な目的だ。ジョセフ体制では、心拍数もチェック。体に負荷がかかった状態でのダッシュ回数を重要視する。掲げる「プレーを切らずに動き続けるラグビー」を実現するためには、攻守どちらの場面でも運動量が欠かせない。GPSの数値を選手に示し、個々のスタミナアップにつなげている。

 ▽ドローン ジャパンの練習には必ずドローンが飛んでいる。空撮でボールとは逆サイドにいる選手の動きまで丸見え。サインプレーや陣形確認だけでなく、スクラムやラインアウト、個々のタックルなども撮影して、技術向上に役立てている。分析班の浜野俊平さん(25)が操縦しており、前回15年大会でも使われていた。約20万円する現行機は、映像をすぐにパソコンに送れるなど、性能が向上。気になった点をすぐに確認できるのは大きな利点だ。

 ▽カート GPSもドローンも特製のゴルフカートがなければ、宝の持ち腐れになってしまう。後部の大型モニターが、ジャパンの羅針盤。空撮した映像、計測した心拍数、走行距離などを即座に表示できる。グラウンドに乗り入れてメンバーの元へ。選手は画面を見つめ、首脳陣の言葉に耳を傾ける。プレーから間髪おかずの反省会が、動きの質を高めている。18年に仲間入り。車体は日本カラーの赤で、桜のエンブレムが描かれている。まさにチームの象徴的存在だ。

 ▽ノート 日本代表の一員としての誇りを感じさせるアイテム。代表選手、スタッフには遠征ごとに名前入りの特製ブックレット(小冊子)が配布される。メモを取る用途に加え、チームの歴史やスローガン、過去の写真、W杯の日程などが記されている。日本代表とは何か。そして、何を成し遂げようとしているのか。ページをめくるたびに、再確認ができる。指揮官は「こういうものからチーム愛が生まれる」と語った。

 ▽カツモト ジャパンには、共に戦う“仲間”がいる。チーム宿舎に飾られている赤の甲冑(かっちゅう)「カツモト」だ。サムライ精神を呼び起こすため昨春から置かれ、名前は選手アンケートにより映画「ラストサムライ」で俳優・渡辺謙が演じた勝元盛次から取られた。「外国籍選手でもこの国とのつながりが持てる。国民の一人として戦う感情を持つ」と指揮官。カツモトが醸し出す厳かな雰囲気が、日の丸を背負う意味を問い掛け続けている。

 ▽4色Tシャツ 墨絵師の御歌頭(OKAZU)氏が日本代表をイメージして描いたという力強い筆絵が描かれた青、赤、黄、黒の4色のTシャツ。選手は普段使いもしつつ、アクティビティーを取り入れたウオーミングアップでビブス代わりに着用することもある。もちろんただの色分けではなく、大所帯を4分の1に分けて色ごとに食事などして互いをよく知り、結束力を高めるのが目的。サンウルブズでも行っているチームビルドで、一体感の醸成を高めた。

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