「リスクを分かち合うこと」がeスポーツ“興行”成立のポイント

[ 2018年5月3日 05:30 ]

リーグ戦には実力プレーヤーが続々と参戦している
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 韓国発の人気バトルロワイヤルゲーム「PUBG」で、プロリーグ設立を目指すDMMGAMES(DMMゲームズ)。連載第2回は、CEOの片岸憲一氏にeスポーツを“興行”として成立させるためのポイントを語ってもらった。

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 DMMゲームズはゲームのオンラインストア事業で業績を伸ばしているが、eスポーツへの参入はまったく新しい挑戦になる。片岸氏もプロ野球やサッカー、バスケットボールなど既存のプロスポーツの商流や成り立ち方を研究中で、PUBGをプロリーグとして独立採算で運営するためのアイデアを模索しているという。数多くの研究対象の中でも、とりわけ明るい展望を見出したのは米国発の総合格闘技であるUFCだった。UFCは1993年に発足した団体。実力至上主義の選手スカウティングやマッチメイキング、有料の動画配信によるペイ・パー・ビュー方式の確立などで一大産業に成長を成し遂げた。

 「UFCは、00年代には10億円のファイトマネーを支払うビッグマッチをするまでに成功を収めました。10億円の夢を描けるスポーツを、10年と少しで実現できる可能性は確かにあるわけです。ゲームが強いと、子どもの頃は誰もが友だちの中でヒーローになれていたと思います。そういう子どもたちが大人になってもヒーローでいられる世界がeスポーツだと、私は考えています。そして、そういう世界は60年、70年後には必然的に実現しているのではないかな…とも考えています」

 eスポーツをプロスポーツにするために、収支やビジネスの面で検討すべき課題は山積している。企業にプレーヤーやチームをスポンサードしてもらうため、広告価値や有形無形のメリットをどう創出するか。リーグ運営のあるべき姿や有効なノウハウは何か。観戦するファンに継続して楽しんでもらうためのリアルイベントやオンラインの視聴環境をどう整備するか…。そんな無数にある課題の中で片岸氏が最重要視しているのは、プロゲーマーを目指すプレーヤーたちとリスクを分かち合うことだという。

「ゲーム、eスポーツに打ち込むプレーヤーたちのリスクを、DMMゲームズも含めた企業サイドが、引き受けられる部分を引き受けることが最も重要です。“優勝者にだけは賞金1億円。さあみんな頑張って”といって、参加者に対して優勝を目指すためのプロセスの面倒は見ないというのは、取り組みとして長期的には継続できないはずです。賞金を用意するのももちろん大事ですが、まずはリーグに参戦するプレーヤーたちが一般的なビジネスパーソンくらいのサラリーを取れるような環境を整えていきたいです」

 「見ていて楽しい」「大きな夢を描けるプロリーグ」「プレーヤーが収入面でもゲームに集中できる環境づくり」をコンセプトに、「PUBG JAPAN SERIES(ジャパンシリーズ)」の準備は進む。3月末には試験的に運営したαリーグを終了し、今月から早くもβリーグをスタート。秋からバトルロワイヤルの火ぶたを切って落とすべく、DMMゲームズは試行錯誤を続ける。(終わり)

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