舛ノ山 序ノ口からの幕内復帰を…右膝手術から再起、母と仲間の言葉力に

[ 2016年10月13日 10:30 ]

序ノ口優勝の舛ノ山
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 先月25日に千秋楽を迎えた大相撲の秋場所は大関・豪栄道が全勝優勝を遂げ、幕を閉じた。その2週間前の初日、午前8時半すぎ。15日間の熱戦が幕が開けたばかりの序ノ口の土俵上に再起を懸ける元幕内力士が立っていた。右膝の大ケガで東序ノ口11枚目まで番付を落とした舛ノ山(25=千賀ノ浦部屋)。西序ノ口11枚目・江塚をつり出して半年ぶりの白星を手にした。

 幕内経験者が序ノ口の相撲に陥落するのは昭和以降では12年夏場所の琉鵬以来2人目だが、出場したのは今回の舛ノ山が初めてだった。その後も白星を並べて7戦全勝で優勝。入門時の06年秋場所以来10年ぶりに序ノ口の土俵に上がった25歳は「落ちるところまで落ちて初心を思い出せた。気持ちが続く限りは関取復帰を諦めたくない」と数年前に多くの相撲ファンの心をつかんだ人懐っこい表情で再起を誓った。

 10年九州場所で高安と同時に平成生まれで初めて関取に昇進。12年九州場所では最高位の西前頭4枚目まで番付を上げ、琴奨菊に勝って初めて大関戦で勝利を収めた。だが、13年九州場所9日目の千代大龍戦で右膝を負傷してから相撲人生が狂い始めた。「右膝蓋(しつがい)じん帯損傷、右膝前十字じん帯損傷」で途中休場。当初手術はせず、だましだましの状態で翌場所以降も出場を続けたことがさらに悪い結果を招いた。十両に陥落していた14年名古屋場所後に「右膝蓋骨反復性脱臼」を発症していることが判明。8月に全身麻酔で3時間に及ぶ手術を行い、じん帯も再建した。

 幕下に陥落した昨年6月には半月板を切除する手術も行った。「2度目の手術の後は全然膝を曲げられず、そんきょもできなかった。無理にやろうとすると水がたまるし、本当にがんじがらめの状態で答えがなかった」。昨年夏場所から5場所連続で休場し、今年春場所で一度は復帰するも、翌場所から再び2場所連続休場。「だめなのかな…」と何度も気持ちが沈んだが、女手一つで育ててくれた母マリアさんからは「治るまではもう無理をしないで。自分のペースでいいから」と励まされ、同じ時期に入門してプライベートでも仲がいい小結・魁聖と幕内・千代の国からも「待ってるぞ」と声を掛けられ、もう一度はい上がる道を選択。「母の言葉が力になっている。2人(千代の国と魁聖)も頑張っているし、同じ土俵に立たないといけない。腐ってる場合じゃない」と懸命にリハビリを続け、ようやく稽古場で相撲が取れる状態まで戻った。

 自らもケガで三段目まで落ちた経験のある千代の国は「腐るなというのは難しいと思うけど前を向いて頑張ってほしい」とエールを送り、舛ノ山の存在を「大好きな人なんで。人間性など全てにおいて。入った時から強かったし、目標にしていたし、勝手にライバルと思っている」と表現。魁聖も「優しくてかわいくていい子。体もでかくて強い。また戻れると信じてる」と待ち望んでいる。関取に戻れた暁には3人でおそろいのハンドバッグを作る予定だ。

 秋場所を終え、舛ノ山は「まだまだ立ち合いの当たりが足りない」と課題を挙げ「ジムも週3回行ってるし、部屋でもほとんど毎日トレーニングしている。休んでる暇はないですね」と前を向いた。目指すは、もちろん序ノ口からの幕内復帰。来月1日で26歳、相撲人生はまだ道半ばだ。(鈴木 悟)

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2016年10月13日のニュース