グラスゴーで考えさせられた体操観戦のあり方

[ 2015年11月4日 09:01 ]

個人総合の演技を終えた内村、電光掲示板には「MAKE SOME NOISE」の文字が
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 内村航平は少し怒っていた。「体操はメンタルスポーツなんで、一気にドカって盛り上がったりするのは、僕は好ましくない」。英国・グラスゴーで行われた体操・世界選手権で個人総合6連覇を達成した後の会見。「熱狂的な観客についてどう思うか?」という問いに対する答えだった。

 海外開催の体操世界選手権を初めて取材し、ド派手な演出に驚いた。巨大なスクリーンに流れる洗練された選手の映像が開幕を告げ、壇上で選手や国の名前がコールされると火柱が上がる。体操の試合というより、ショーを見ているような気分だった。まあ、ひと言でいうと新鮮で格好良かったのだ。

 ただ、好演技に大声援が起こるだけでなく、選手にとっては集中を保ちたい種目間も、アップテンポなミュージックが流れ、イケメンのMCは観客に更なる盛り上がりを要求する。「“叫べ”みたいなやつありましたよね、あれは良くないと思う」と言う内村は個人総合の演技後、「沸かせるだけ沸かせてやろう」と両手を振り上げて観客をあおった。それは「スポーツは盛り上がってなんぼ」に対する、アンチテーゼだったのかもしれない。

 一方で、国内の大会はどうか。盛り上げのためのサービスはあまり感じない。粛々と進行するため、今、どの種目に注目すればいいのか、分かりにくいケースがある。観衆の多くを体操関係者を占めるからか、「分かってくれる人だけ、分かってくれればいいんです」感も垣間見える。

 床運動を制した白井は「世界選手権みたいなことをやったら、日本では完全にやりすぎ」としながらも、「もう少し盛り上がるように、ライブ的な感じにしていった方がいいのも」と続けた。内村も正当な盛り上がりなら否定はするまい。体操ニッポンが新黄金時代を迎えようとしている今だからこそ、方法次第でもっとファンを増やすことができるはずだ。(杉本 亮輔)

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2015年11月4日のニュース