中本 うれしくて悔しい5位!五輪→世陸連続入賞は日本初

[ 2013年8月18日 06:00 ]

日の丸を持つ中本

世界陸上第8日

(8月17日 ロシア・モスクワ)
 男子マラソンが行われ、昨年のロンドン五輪6位・中本健太郎(30=安川電機)が2時間10分50秒で5位に入った。五輪と翌年の世界選手権で連続入賞するのは日本初。世界選手権での日本勢は8大会連続の入賞となった。

 派手なパフォーマンスはない。死力を尽くしてゴールにたどり着いた中本は、フィニッシュした後に軽く右手を上げた。メダルを獲得していないのに関係者から日の丸を渡されると、恥ずかしそうに笑いカメラマンの要求に応えた。昨年のロンドン五輪6位から一歩前進して5位。五輪と翌年の世界選手権で連続入賞は日本初だ。「うれしいのが半分、悔しいのが半分。メダルも見えていたので…」と振り返った。

 ロンドン五輪では序盤は自重したが、モスクワでは積極的なレースを披露した。先頭集団の好位置につけ、30キロすぎで集団から脱落したが、ここからが中本の真骨頂だ。33・9キロで6位に浮上すると、35・5キロで再び先頭集団にカムバック。38・5キロで5位に上がり、4位のケベデを懸命に追ったが、最後は届かない。「あそこで抜けないのが自分のスピードのなさですね」と苦笑いだ。

 拓大4年時に箱根駅伝7区で区間16位にすぎなかった中本は実業団に入ってから驚異の安定感を身につけた。トラックの5000メートルの自己ベストは今も14分台(日本記録は13分13秒20)だが、42・195キロでの粘りは日本屈指。過去10度のマラソンで最低順位が11年大邱大会の10位。どんなコンディションでも安定した結果を残してきた。大会前は外国勢の速さに対抗できるようスピード練習を多めにこなした。モスクワを想定し、北海道千歳市で練習。設定ペースも1キロ当たり2~3秒上げた。「いい練習ができた。万全」との手応えがあった。暑さが弱点の川内は「涼しくなってほしい」と願ったが、中本は消耗戦を歓迎。「暑くてタフなレースになってほしい。過酷なほどいい」と自信を見せていた。

 家族の声援が力になった。沿道には玲子夫人(24)と長男・理久くん(1)の姿が。往復コースで見る度に力がわき、後半の粘りにつながった。理久くんはまだ、パパが走っていることを理解はしていないという。「リオまで頑張ったら分かってくれますよね。それまでは頑張りたい」。16年リオデジャネイロ五輪でメダルを獲って、最高に格好いいパパの姿を愛息に届ける。

 ◆中本健太郎アラカルト
 ☆生まれ 1982年(昭57)12月7日、山口県下関市(旧菊川町)出身の30歳。
 ☆野球少年 楢崎小でソフトボールを始め菊川中では野球部に所属。足の速い外野手だった。中学3年時、俊足を買われて駅伝大会に出場し、それが西市高(山口県下関市)陸上部監督だった富家章治さんの目に留まってスカウトされた。
 ☆無名ランナー 西市高で本格的に陸上を始めたが、5000メートルは15分台で全国大会出場はなし。拓大に進学しても箱根駅伝は4年生時の7区16位の1度だけの出場だった。寮の同部屋には1学年上の藤原新がいた。拓大卒業後は地元に近い安川電機(北九州市)に所属したが、駅伝メンバーにさえ選ばれず08年にマラソンに転向して才能が開花。
 ☆家族 昨年6月27日に玲子夫人(24)が長男・理久(りく)君を出産。父・輝美さん(58)、母・京子さん(56)はともに実業団の宇部興産陸上部に所属。父はマラソンで2時間24分12秒の記録を持つ。
 ☆主なマラソン成績 11年の世界選手権10位。12年びわ湖毎日では日本人2番手の5位に入った。昨年ロンドン五輪は2時間11分16秒で6位入賞。今年2月の別府大分マラソンでは2時間8分35秒の自己ベストで2位。
 ☆サイズと血液型 1メートル72、57キロ。血液型A。

続きを表示

この記事のフォト

2013年8月18日のニュース