「大鵬道場」大嶽部屋が朝稽古再開 納谷さんの前で力士全員四股

[ 2013年1月22日 06:00 ]

元横綱大鵬の納谷幸喜さん=2010年5月撮影

大相撲初場所9日目

(1月21日 東京・両国国技館)
 19日に死去した元横綱・大鵬の納谷幸喜さん(享年72)が創設した大鵬部屋の流れをくむ東京都江東区の大嶽部屋は21日、朝稽古を再開した。力士8人全員が上がり座敷に安置された納谷さんの前で四股を踏んだ。また、横綱・日馬富士は関脇・豪栄道を破り、初日から土つかずの9連勝。横綱・白鵬、平幕の宝富士が1敗を守った。

 午前7時すぎ。「大鵬道場」の看板が掲げられている大嶽部屋の稽古土俵に大きなかけ声が響いた。上がり座敷に横たわる納谷さんの前で、大砂嵐ら8人の力士がじっくりと四股を踏んだ。

 稽古前には大嶽親方(元十両・大竜)が訓辞。「ふがいない成績だが、あと3番、勝っても負けても、意地があったら頑張れ。悔いのない相撲を取れ」。8人中6人は黒星が先行しているだけに奮起を促した。その言葉と決意を胸に汗を流した。来客用に土俵の半分は板張りとなっており、スペースは通常の半分。ぶつかり稽古などはできない。森麗は取組のため先に部屋を出たが、7人は約1時間、四股を繰り返した。

 稽古後に大嶽親方は「きのうは“こんなことで稽古休みやがって”と、(納谷さんは)怒っていたと思います。きょう再開して、褒めてくれるんじゃないかな」と話し「親父(納谷さん)が横にいる気がして。何か言ってくるんじゃないか。そんなピリピリとしたものがあった」と続けた。気負いがあったのか、この日土俵に上がった4人は全員が敗れた。4連勝だった大砂嵐も初黒星。陽気なエジプト出身力士も「きょうはもういいですか」と嗚咽(おえつ)を漏らし、交流サイト「フェイスブック」には「負けてすみません。十分に集中していなかった」と英語で書き込んだ。

 ふがいない“弟子”を叱咤(しった)するように納谷さんの遺体は通夜前日の29日まで部屋に安置されることになった。弔問客に対応するための措置。夜には他の場所に移されるが、翌朝には再び部屋に戻る。この9日間が最後の指導になる。

 葬儀などの準備も進んでいる。31日の告別式後には霊きゅう車が両国国技館、納谷さんが現役時代を過ごし今場所限りで消滅する二所ノ関部屋や、大嶽部屋などを回って火葬場に向かう方向で調整中。大嶽部屋前に一般弔問用の記帳台を設置することも検討している。別れの時は刻々と迫っている。その時まで納谷さんは稽古を見守り続ける。

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2013年1月22日のニュース