愛子「びっくり」日本人対決制して2冠達成

[ 2009年3月9日 06:00 ]

表彰式で、メダルを手に笑顔の2位になった伊藤みき(左)と優勝した上村愛子

 フリースタイルスキーの世界選手権猪苗代大会最終日は8日、福島県猪苗代町のリステルスキーファンタジアで男女デュアルモーグルを行い、女子では前日のモーグルで初の世界女王に輝いた上村愛子(29=北野建設)が2冠を達成。バンクーバー五輪に向け“盤石”を印象づけた。決勝で上村に敗れた伊藤みき(21=中京大)が銀メダルを獲得し、表彰台が条件だった内定条件を満たし、2大会連続の五輪出場を決めた。また、男子では西伸幸(23=白馬ク)が銀メダルを獲得し、男子初の五輪内定選手となった。

 日本人同士の決勝で、上村のハートに火がついた。「みき(伊藤)と戦えてうれしかったけど、年上のお姉さんとして負けられないなとは思った」。第1エアまでは互角。しかし、中間の滑りで徐々に差を広げ、第2エアの着地でふらつきながらも、ゴール先着は譲らなかった。20―15。スコア上はこの日最大の苦戦も、表情には余裕があった。涙のない2冠達成に「びっくりしました」と目を細めた。
 モーグル優勝から1日。「前日があって(試合に)合わせるのは正直難しかった。でも、出るからにはいい滑りをしたかった」。予選トップ。決勝トーナメント4戦は、1度も先着を許さなかった。エアの着地で乱れても、荒れたコースでターンのバランスを崩しても「これは(2人で滑る)デュアル。どんどん滑っていかないと」と割り切った。準決勝で対戦した現W杯総合首位のカーニー(米国)はコースアウト。上村のスピードが、いかに重圧を与えるかを物語っていた。
 高野弥寸志ヘッドコーチは「(斜度のきつい)難しいコースだからコブに対して(ブレーキがかかるように)スキーを横にしたくなる。縦にするのは勇気がいる。愛子には勇気がある」と説明した。スピードが出れば体の制御は難しくなる。スキー操作のため、東京・渋谷区内のスポーツクラブで体幹を鍛える上村だからこそできる技術。自身も「普通に滑ればスピードで先行しているのが分かっている」と精神的なアドバンテージにつながっていることを強調した。
 4度目の五輪は、唯一無二の世界選手権女王として迎える。「去年はW杯で総合優勝して、チャンピオンらしくとか思ったけど、やっぱり私は私でいいんだと思った。今季はゆっくり体づくりを始めて今いい状態。バンクーバーは2月上旬なので、今年はオフもあまり休まず、ずっと頑張っていこうかなと思っています」。描く青写真の先にあるのは、もちろん金メダル。デュアルモーグルは五輪種目ではないが、影を踏ませぬ速さが本番のモーグルでも最大の武器になる。

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2009年3月9日のニュース