愛娘がいたから…ウッズ勝てた名勝負!

[ 2008年6月18日 06:00 ]

 タイガー・ウッズ(32=米国)がロッコ・ミーディエート(45=米国)とのプレーオフを制し、ジャック・ニクラウスに続いて史上2人目の4大メジャー大会でそれぞれ3勝以上するトリプルグランドスラムを達成した――。USPGAツアーの全米オープンプレーオフは16日、米カリフォルニア州サンディエゴのトーリーパインズGC南C(7643ヤード、パー71)で行われた。ウッズは左ひざ手術からの復帰戦にもかかわらず、気迫で手にした歴代2位のメジャー通算14勝目。単独3位となるツアー通算65勝目を飾った。

 苦痛にゆがんでいたウッズの表情が最高の笑顔に変わった。サドンデス1ホール目の7番パー4。先にパーパットを沈めたウッズは、ミーディーエートの約5メートルのパーパットが外れたのを見届けると、キャディーと抱擁。そして、駆けつけたエリン夫人から祝福の熱いキスを受けた。
 「この優勝が一番、記憶に残る。今まででベスト。長い1週間で自信を持てない時もあった。でも、91ホールを終えた今、僕はここにいる」。今回ばかりは卓越した技術でも、自慢の飛距離でもない。気力で勝利をもぎ取った。
 左ひざは限界を越えていた。10番までに3打差をつけたが、4月に軟骨除去手術を受けた影響が時間とともに出た。強烈な上半身のひねりから抜群の飛距離を生むスイングは左ひざに大きな負担がかかる。04年からヘイニー・コーチと負担の少ないスイングに変えたが、術後初の試合で、5日目。ひざが耐えられるはずもない。下半身に粘りが消え、11番から連続ボギー。ミーディエートは13番からの3連続バーディーを奪い、15番では逆に1打差をつけられた。
 息詰まる死闘。奇跡を起こしたのはやはりウッズだった。18番パー5。ティーショット後に激痛に顔をしかめながら、それでもフェアウエーキープ。足を引きずりながら残り217ヤードの池越えの第2打をグリーンに乗せた。気迫に押されたのかミーディエートはいきなり第1打をバンカーに入れるとパーが精いっぱい。ウッズは「全身全霊を込めてバーディーを奪いに行った」との言葉通り、2パットで沈めた。2日連続で追いついた最終ホール。気迫で相手を飲み込むと、サドンデスは1ホールで決めた。
 02年を最後に全米オープンでは勝てなかった。ゴルフの師でもある父・アールさんを亡くし、2年前は屈辱の予選落ち。昨年は2位で涙をのんだ。その翌日の6月18日に転機が訪れた。待望の長女、サムアレクシスちゃんが誕生。ひざのリハビリ中は「サムが笑ったり、歩いたり、成長する姿を見ていると、手術したことなんて忘れられた」という。エリン夫人の祝福のキスの後には、18日に1歳の誕生日を迎える愛娘を抱きかかえるパパの笑顔がはじけた。
 メジャー通算14勝はニクラウスの18勝に次ぎ、歴代2位。トリプル・グランドスラムも史上2人目の偉業だ。ただ、「昔のようにはいかない」とひざの回復が遅れたのも事実で「これ以上はプレーできない状態。しばらく休みたい」と32歳の肉体への代償も大きい。次の照準は7月11日開幕のメジャー、全英オープン。視野に入れた帝王超えに向け、ウッズの自分との戦いが始まる。

 ◆ウッズデータ
 ▼トリプル・グランドスラム メジャー4大会(マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロ)をいずれも3勝以上挙げる偉業。ウッズの達成はニクラウスに次いで2人目だが、ニクラウスは38歳での達成に対し、ウッズは32歳で成し遂げた。
 ▼コース最多記録 ジュニア時代から慣れ親しむトーリパインズGCは相性抜群でビュイック招待での6勝(4連覇中)と合わせて7勝は米ツアー最多記録。
 ▼米ツアー通算65勝 ベン・ホーガンを抜き、82勝のサム・スニード、73勝のニクラウスに次ぐ単独3位。
 ▼プレーオフ 今回の勝利で米ツアーでのプレーオフは通算11勝1敗。うち、3勝がメジャー。

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2008年6月18日のニュース