三菱重工浦和 明日12日開幕の「WEリーグ」で初代女王のタイトルを目指す
日本初の女子プロサッカーリーグ「Yogibo WEリーグ」はあす12日に開幕する。初年度の21~22年シーズンは11チームが参加。来年5月21、22日の最終節まで全110試合を戦う。三菱重工浦和レッズレディースは、昨季のなでしこリーグを制したメンバーを中心に初代女王のタイトルを目指す。
女子サッカーが新時代に突入した。「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」という理念のもとに立ち上がったWEリーグ。これまで女子サッカーの最高峰だったなでしこリーグ1部から7チーム、同2部から2チーム、さらに新設の2チームが参入した。プロ化に伴いハイレベルな戦いが期待される国内最高峰のリーグで、優勝候補の筆頭に挙げられるのが浦和だ。
昨季のなでしこリーグは序盤から突っ走った。開幕3連勝のあとに1敗を喫したが、第5節の勝利で首位に返り咲くと、そこから6連勝。6連覇を狙う日テレとの勝ち点差を8に広げた。その後も順調に勝ち点を積み重ね、第16節は愛媛レディースに5-1と圧勝。2試合を残して6年ぶり3度目の優勝を決めた。
森栄次監督の下、選手は流動的にポジションを替えながらボールを支配するサッカーを展開。さらに攻守の切り替えの速さでゴールを奪うなど、チーム全体が連動して栄冠にたどり着いた。菅澤は3度目の得点王に輝きMVPも受賞。ベスト11には、菅澤に加えGK池田、DF南、長船、清家、MF柴田、塩越、水谷の計8人が選ばれた。WEリーグの参入チームが決まると戦力補強に動くチームが目立ったが、浦和は主力が全て残留。頂点を極めたメンバーで初年度のWEリーグを戦えるのは強みだ。
昨季、最も飛躍した選手の一人に挙げられるのがMF塩越だ。ユースから昇格した16年は全試合に出場したものの、18、19年は出場機会が減った。プレーに波があったためレギュラーの座を手放したが、昨季は公式戦全試合に出場した。「波がなくプレーできたのが自分のコンディションアップにつながりました。プレーの幅も広がり、自分自身の調子が上がっているのを感じて、それがプラスに働いて自信につながりました。シーズンを通して成長できたかなと思います」。サイドからドリブルですり抜けてチャンスをつくるなど欠かせない存在となった。
チームでの活躍が認められ、昨年10月には初めてなでしこジャパンに招集された。代表デビューとなった今年6月のウクライナ戦では2得点。一気に東京五輪代表の座を手にした。五輪では2試合に先発。メダルには届かなかったが「それ以上に得るものは多かった」と捉えている。
昨季から変わってきたのはゴールへの意識。「ゴール前でパスではなくシュートで終わるという選択肢を持てるようになりました。昨年以上にゴールへ向かうプレーや貪欲なプレーは出していきたい。昨年はリーグ戦で3得点でしたが、今季は10点取れたら最高ですね」と抱負を語った。
昨季はリーグ戦14勝のうち1点差勝利が10試合と接戦をものにしてきた。ドイツ・フライブルクから2シーズンぶりに復帰したMF猶本は、勝負強さを発揮した攻撃陣の中で新境地を見せた。以前はボランチでプレーしていたが、昨季はトップ下やFWなど前めのポジションでプレーして5得点を挙げた。「ドイツはゴールへゴールへと向かうサッカーなんです。よりゴールに速いですし、ゴールに向かう姿勢を学びました」と海外で磨いてきたことをフィードバックした。
セットプレーではキッカーを務めるが「自分のキックの軌道を理解できるようになってきました」と手応えをつかんでいる。「WEリーグの初代チャンピオンはずっと歴史に残る。みんなで勝ち取りたい」と優勝だけを見据えている。
守備陣は昨季、リーグ最少の17失点と踏ん張った。その中心を担ったのが長船とともにセンターバックを務めた南だ。18年U-20W杯では主将として日本の初優勝に貢献し、チームでは19歳だった同年からレギュラーとして出場している。19年からはなでしこジャパンでも活躍し、東京五輪では憧れの存在でもある熊谷(バイエルンM)とコンビを組んだ。
世界との差を肌で感じているだけに、WEリーグを高めていきたいという思いも強い。「やっている選手のレベルが上がらない限り、見てくれる人も楽しくない。まずは浦和レッズレディースとして強くなり、いろんな人に見てもらえるように全員で頑張りたい」と責任感を口にしている。
11年W杯の優勝メンバーでもあるFW安藤は39歳にしてなお成長を続けている。今年2月からは筑波大人間科学学術院の助教となり、午前の練習を終えてから大学に向かい、年齢に打ち勝つトレーニングなどについても研究している。「研究から自分のサッカーに生かせるものがたくさんある。サッカーの現場で出た課題を研究につなげていこうとしているのですごく楽しい」。助教となる前から研究は続けており、昨季はメッシの動作を解析して取り入れ、ドイツから復帰した17年以降では最多となる公式戦8得点につなげた。
「自分がどこまでできるか1年1年、勝負してチャレンジしている」。後輩たちに経験を伝えるだけでなく、今季もプレーでチームを引っ張っていく覚悟だ。
若手から中堅、ベテランまで、バランスのいいメンバーで臨むプロリーグ。熱い声援を送ってくれるサポーターとともに、今季も歓喜の瞬間に向かって突き進む。
〇…三菱重工は浦和レッズレディースのWEリーグ参入に伴い、3年間のネーミングライツ(命名権)を取得。チームの呼称は「三菱重工浦和レッズレディース」に変更となった。同社はクラブの株主でもあり創立時から長年支援を続けてきた。また、三菱重工グループ全体でスポーツ活動を推進。企業スポーツとして硬式野球部(West&East)、ラグビー部(相模原ダイナボア-ズ)、マラソン部を有し、Jリーグの浦和レッズもグループ会社の一つだ。
企業スポーツの活動については、YouTube公式チャンネル「三菱重工スポーツチャンネル」で紹介しており、試合以外の選手の素顔や意外な一面が垣間見えるチャンネルになっている。同社は公式チャンネルを通じ「プロサッカークラブの浦和レッドダイヤモンズ、三菱重工浦和レッズレディースと共に、常に頂点を目指しスポーツ界を盛り上げていきます」としている。
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