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オシム氏 注目は3国 「面白くする」のはイングランド

[ 2014年3月27日 07:19 ]

イニエスタ(右)を中心にW杯連覇を狙うスペイン

オシムの提言2

 ブラジルW杯の注目国はスペイン、ブラジル、ドイツだ。W杯は向こう4年間の世界のトレンド、方向性を決めるサッカーの国際見本市のようなものだ。

 スペインは08年の欧州選手権から大きな大会で3回続けて優勝したが、W杯ではここ50年間、連覇した国はない。スペインの特徴は、2つのビッグクラブ(バルセロナとレアル・マドリード)の選手を中心にしていることだ。これまで、スペインではライバル関係が代表にまで持ち込まれ、チームとしてうまくいかなかった。しかし、現在はうまく融合し、お互いをよく知り、5~6年も一緒にプレーしている。そのスタイルはクラブチームとしてのバルセロナの成功と合わせて、ここ数年、世界のサッカー界で大きな流れをつくってきた。それが通用するのかどうか。

 ブラジルには開催国のアドバンテージがある。観客の大半はブラジルの応援だろうし、スペイン打倒の一番手、あるいは優勝候補であることは間違いない。ここしばらく8強止まりだったので、今度こそはという期待も高まっているだろう。しかし国民の期待は、逆にプレッシャーにもなる。直前の親善試合や出だしでつまずけば、サポーターが一斉にブーイングをする。ブラジルはそういう国だ。(昨年の)コンフェデ杯(ブラジルが優勝)は親善試合みたいなもので、本番では比較にならないほど大きな重圧がかかる。

 ドイツは90年イタリア大会で優勝して以来、ぱっとしなかったが、モデルチェンジをして復活した。伝統的なフィジカルの強さにスペイン風のティキタカ(チクタクの意味。細かいパス回しのポゼッションスタイル)もできるようなテクニックのある選手が育ってきた。バイエルンの監督にグアルディオラ(元バルセロナ監督)が就任したことも大きな影響を与えている。昨年のチャンピオンズリーグの決勝がドイツ同士(バイエルン―ドルトムント)だったようにクラブチームでは現在No・1だ。

 W杯を面白くするという意味では66年の優勝以来「何も成し遂げていない」イングランドか。くじ運が悪く、難しい組に入ったが(ウルグアイ、イタリア、コスタリカと同組)突破できれば活躍しそうな気がする。

 アフリカ勢はヨーロッパでプレーしている選手以外、あまり情報がないが、個々のポテンシャルが高いことは疑いない。しかし、チームとして、どこまで力を爆発させられるか予想がつかない。ガーナやナイジェリアは久しぶりに何かやりそうな気がする。(日本と同組の)コートジボワールも強そうだが、日本戦では活躍しないでほしい(笑い)。よく知らない相手は過小評価しがちだ。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは今回、唯一の初出場国だが、ただでさえ民族がたくさんあって、宗教もカトリック、イスラム教など3つあり、日本とは違った困難がある。W杯本大会が近づくと選手もマスコミもプレッシャーから感情的になったり、興奮したりする。監督の仕事は、それを少し落ち着かせることから始まる。メンバー選考、対戦相手研究、戦術実行のためのトレーニングの工夫など、どれもデリケートな仕事、監督自身がナーバスになるのはよくない。

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2014年3月27日のニュース