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プレミアが生んだ悲劇 イングランドの弱点は…

[ 2010年1月26日 06:00 ]

 イングランドが“GK危機”に直面している。2010年W杯南アフリカ大会で優勝候補に挙げられているものの、ゴールを守る守護神に関しては極度の人材不足に陥っている。外国人選手に依存する傾向が強いプレミアリーグの影響で人材が育たず、不安を抱えたままW杯を迎える可能性が高まってきた。

 前線にルーニーが君臨し、中盤にはジェラードとランパードの強力コンビ。最終ラインにもテリーとファーディナンドという2枚看板をそろえるが、ゴールマウスを誰が守るのかについては知らないファンがいても無理はない。ことGKに関しては極端に人材が乏しいからだ。

 「W杯で誰を起用するか、およそ見当はつけている。問題ないだろう」

 カペッロ監督は不敵に笑うが、現実は厳しい。

 W杯予選前半戦5試合で先発したジェームズはAマッチ49戦の実績を誇るが、既に39歳で故障がち。本大会出場が危ぶまれる状況で、後半戦の軸となったグリーンも絶対的な評価は得ていない。予選中は3人が先発起用され、総勢6人が入れ替わりでベンチ入りした。

 乱立状態はW杯メンバー争いに持ち込まれ、3月3日の親善試合エジプト戦に向けては、地元メディアから若手待望論も沸き起こっている。バーミンガムを引っ張る22歳のハートに対する期待が高まっているが、ここまで出場わずか1試合と経験不足は否めない。92~02年に代表で活躍した元GKナイジェル・マーティン氏は「正GKと呼べる存在がいない。悲しい状況」と指摘する。

 地元開催の66年W杯で優勝を支えたゴードン・バンクス、70~90年に歴代最多の125試合出場を誇ったピーター・シルトンと名GKを輩出してきたサッカーの母国。だが、近年は不作が続いている。

 原因はプレミアリーグにある。巨額の放送権収入で外国人選手を集め、地元選手は出場機会が激減。特にGKは外国人が目立ち、今季各クラブで正GKと呼べる地元出身選手はわずか5人。08年1月就任のカペッロ監督が初采配で「地元の選手が(リーグの)38%と少なく37歳のGK(ジェームズ)を使わざるを得なかった」と嘆いた状況はいまだ改善されていない。

 ブックメーカーの優勝オッズは5・5倍のスペインに次ぐ6倍の評価をブラジルと分け合っているが、不出来が敗戦に直結しかねない守護神の不在を克服できないまま、W杯に挑むことになりそうだ。

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2010年1月26日のニュース