【日本ダービー】タスティエーラ首差頂点 皐月賞2着の雪辱 テン乗り69年ぶりV

[ 2023年5月29日 05:30 ]

<日本ダービー>レースを制したレーン騎乗のタスティエーラ(中央)ソールオリエンス(左)は2着(撮影・河野 光希)
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 69年ぶりにジンクスが破られた。3歳馬の頂点を決めるG1「第90回日本ダービー」が28日、東京競馬場で行われ、ダミアン・レーン(29=オーストラリア)騎乗の4番人気タスティエーラ(牡=堀)が優勝。テン乗り(初騎乗)でのダービー制覇は54年ゴールデンウエーブ以来の快挙。堀宣行師(55)はダービー2勝目。サトノクラウンの初年度産駒で、新種牡馬によるダービー制覇は09年ロジユニヴァース(父ネオユニヴァース)以来14年ぶりとなった。

 「テン乗りではダービーを勝てない」。70年近く続いたジンクスも、南半球の天才には関係なかった。タスティエーラと大仕事を全うし、意気揚々と引き揚げてきたレーン。検量室前で迎えた新妻ボニーさんに駆け寄ると、熱いハグから祝福のキス。普段は職人肌の雰囲気をまとう天才が29歳の青年の顔に戻った。4度目の騎乗でダービー初勝利。「正直、その記録は知らなかった。知っていてもジンクスは信じなかった。妻と一緒に勝利を経験できたのは特別な思い出です」と感慨深げ。レース後は90回を記念した馬車パレードでファンに手を振り、勝利の余韻に浸った。

 一世一代の大舞台で実行したのは“プランA”。「レース前はいくつかプランを考えるが、今日は理想の競馬。珍しいパターン」とレーン。好スタートから好位を確保。拍子抜けするほどスムーズに直線へ。直後に控えた皐月賞馬ソールオリエンスは意識せずにスパート。力強くトップスピードへ。ゴール前でジリジリと迫るソールを、首差で振り切り栄光のゴールを駆け抜けた。「残り800メートルでベストパフォーマンスを出せるなと思い、残り400メートルの反応でさらに自信が持てた。全ては馬のおかげ」。センス抜群の相棒が名手の理想を体現した。

 堀師は15年ドゥラメンテ以来のダービー2勝目。その8年前には苦い思い出があった。「馬場を歩くと凄く硬くて、水分が全くなかった。凄い能力がある馬だったので勝つとは思っていたけど、この馬場を走り切ったらどうなるんだと…」。心配は的中。ドゥラメンテはレース後に両前脚骨折が判明。長期離脱を余儀なくされた。この日も蹄鉄が外れたタスティエーラの左前脚を真剣な表情でチェック。「調教師がホッとできるのはゴールの一瞬だけ。すぐに次のレースに向けて現実に戻される」と本音も。ただ、その15年ダービーで3着だった管理馬サトノクラウンの産駒が恩返しの激走V。「でも、その一瞬を味わえるだけで幸せなんですよね」と口元を緩めた。

 秋の目標について、オーナーサイドは菊花賞(10月22日、京都)か、天皇賞・秋(10月29日、東京)を挙げた。「レースごとに良くなっている。すぐにリラックスできる馬だから距離が延びても大丈夫」とレーン。古馬になってG1を2勝(16年香港ヴァーズ、17年宝塚記念)した父サトノクラウンの血統も将来性を約束する。2歳G1、皐月賞、NHKマイルC、そしてダービー。次々と新ヒーローが誕生する3歳牡馬。果たして秋は…。群雄割拠の世代の新たな激闘譜が待ち遠しい。

 ◇タスティエーラ 父サトノクラウン 母パルティトゥーラ(母の父マンハッタンカフェ)20年3月22日生まれ 牡3歳 美浦・堀厩舎所属 馬主・キャロットファーム 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績5戦3勝(重賞2勝目) 総獲得賞金4億8232万9000円 馬名の由来はイタリア語で(楽器の)キーボード。母名より連想。

 《54年ゴールデンウエーブ岩下密政以来》
 ダービーをテン乗り(初騎乗)の騎手が制したのは54年ゴールデンウエーブの岩下密政以来69年ぶり、4頭目の快挙。同馬は公営大井でデビューし、8戦6勝で中央移籍。皐月賞とNHK杯(当時)で7着に敗れての出走。12番人気の低評価を覆すVだった。半世紀以上続いた“テン乗りではダービーを勝てない”というジンクスは、オーストラリアの名手によってついに打破された。

 《キャロットF2勝目「皐月賞とは違った」》
 キャロットファームは17年レイデオロ以来のダービー2勝目。秋田博章社長は「皐月賞とは明らかに違いましたね。今週の調教は一番いいと思っていました。ソールオリエンスが後ろにいて、力勝負で勝ち切ってくれましたし、本当にうまくレースを運んでくれたと思います」とレーンを称えた。今後については「菊花賞か天皇賞・秋の2択ですね。トライアルを挟むかなどは、状態を含めて見ていくと思います」と話した。

 《ノーザンF12勝目「しのいでくれ、と」》
 ノーザンファーム生産馬は一昨年シャフリヤール、昨年のドウデュースに続きダービー通算12勝目。津田朋紀場長は「今までで一番、中間の気配は良かったのではないでしょうか。放牧に出して精神的にもリラックスできていたのが大きかった。ソールオリエンスが来ていましたが、しのいでくれと思いながら見ていました」と振り返った。きょうだいには2歳がブリックスアンドモルタルの牝馬、1歳はレイデオロの牝馬がいる。現在は全きょうだいとなるサトノクラウンを受胎中。

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