【ここに名手あり・永森大智】高知の赤い彗星“帝王学”でWASJ制覇へ

[ 2016年8月2日 05:30 ]

WASJでの活躍を誓う永森

 財政難で苦しい経営が続く地方競馬。元荒尾競馬騎手で現在、スポニチ大阪本社中央競馬担当の細原邦央が、その魅力を発掘する連載「ここに名手あり」。今夏は隔週火曜掲載、全3回でお届けする。初回は昨年の高知競馬リーディングジョッキーで、27、28日に札幌で行われるワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)への出場を決めた永森大智騎手。地方トライアルでは第1Sの8位から、第2Sで2連勝を挙げる大逆転劇で夢の切符をつかんだ。“高知の赤い彗星(すいせい)”が掲げる目標はもちろん「シリーズ優勝」。その熱い思いに迫った。

 高知競馬の帝王といえば赤岡修次。06年から14年までトップに君臨し、NARグランプリで最優秀勝率騎手賞を4度、ベストフェアプレー賞にも2度輝いている名手だ。昨年は活躍の場を広げるべく、南関東に2カ月間の期間限定騎乗でさらなる高みを目指した。その間にリーディングジョッキーの座を奪ったのが“赤い彗星”の異名を取る永森大智。昨年は当地最高峰のレース・高知優駿制覇(オトコノヒマツリ)など年間203勝。いま高知で最も勢いのあるジョッキーだ。

 「去年は馬主さんや(所属先の)雑賀先生のおかげで、多く勝つことができました。それでも(赤岡)修次さんには、まだまだかなわないです。騎手としても人間としても尊敬できる方ですし、これからも目標にしていきたいです」

 競馬サークルで騎手は花形。その頂点に立つことは、技術だけではなく人間性も他の模範でなければならない。それを教えられたレースがある。赤岡とゴール前で1、2着争いをしていたときのこと。永森が勝利を意識しすぎるあまり、ヨレ癖のある馬に内からムチを入れて赤岡の騎乗馬にぶつけてしまったのだ。結果的に勝利することができたが、レース後の検量室で赤岡に叱咤(しった)されたという。「普段はめったに言われないが“おまえが手本にならないと”と、怒られました」。どんな場面でも常に冷静な振る舞いを――。偉大な背中を追って、日々精進してきた。

 その精神で臨んだ今年の「スーパージョッキーズトライアル」。盛岡競馬の第1Sは14着(1ポイント)、3着(13ポイント)でトップから12ポイント差の8位だったが、名古屋競馬の第2Sでは2連勝の大逆転劇でWASJ出場の切符をつかんだ。

 「中央の騎手とは地方交流重賞で対戦したことがあるが、馬のレベルが違いすぎて悔しい思いばかり。今回は条件が違う。雰囲気にのまれないよう自分らしく挑戦したい。出場するからには優勝を狙います」

 赤岡も同シリーズ(前・WSJS)に2度挑戦し07年の総合3位が最高。帝王が果たせていない夢を果たすべく“土佐の一番星”が大舞台で輝きを放つ。

 ◆永森 大智(ながもり・たいち)1986年(昭61)11月8日生まれの29歳。高知県出身。04年10月10日高知競馬場でデビュー。同年11月28日ケイエスアーリーで初勝利。通算7160戦1232勝(7月25日現在)。昨年は203勝(780戦)を挙げ、高知競馬リーディングジョッキーに輝く。WASJ初出場。1メートル68、52キロ。血液型A。

 ◆ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)秋に行われていたワールドスーパージョッキーズシリーズの名称が変更され15年から夏の札幌競馬場で開催。土日計4レースでポイントを争う。個人戦に加えて「WAS選抜チーム(外国人騎手・地方代表騎手)」と「JRA選抜チーム」との対抗戦も実施。

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