73歳レジェンド、加藤電撃引退 1日戸田での15年7カ月ぶりFで決意

[ 2015年5月8日 05:30 ]

記者会見で現役引退を発表する加藤

 現役最年長ボートレーサーの加藤峻二(73=埼玉)が電撃引退を発表。7日午後、都内で引退記者会見が行われた。

 56年間、ひたすら真面目に走ってきたスターが静かに表舞台から身を引いた。「今まで応援していただいたファンに直接お礼を言いたかった」と、まずは電撃引退となったことをわびた。引退を決意させることになった一因はフライング。5月1日の戸田初日に15年7カ月ぶりのフライングを切り、連続スタート無事故の記録は3937走で途切れた。「フライングがいまだに信じられない。この気持ちでは続けられないと思い引退を決心した」と説明した。

 数々の記録を塗り替えてきた加藤だが、一番誇りに思う記録は出走回数。「たくさん走ればそれだけ事故も増える。休まず走って来られたことが誇りだった」と言うように、スタート事故を期に身を引くことが加藤の美学だったのだろう。結果的に引退シリーズとなった戸田では「レースだけに集中した」と引退を誰にも告げることなく、残り5日間7走を(2)(3)(3)(1)(2)(2)(1)着の好成績。最後まで一流レーサーの精神を貫いた。

 初めて引退を告げたのは妻のヨシエさん(69)。里帰りしていた娘と孫が帰るのを待ち、そっと打ち明けると「長い間ご苦労さま」のひと言。肉体的な衰えが原因ではなかっただけに悔いは残るが「未練たらしいが正直もっと走りたかった。今後のことは全く考えていない。年も年だし、ゆっくり休みたい」。すんなり受け入れてもらうことにより、加藤は穏やかにレーサー人生に終止符を打った。

 下関に出場中の今村豊は一報を聞くなり号泣した。「私にとって一番の目標であり神様のような方でした。もう少し走っていてほしかった」とコメント。永遠のスターは多くのファン、仲間に惜しまれながらカポックを脱いだ。

 ◆加藤 峻二(かとう・しゅんじ)1942年(昭17)1月12日生まれの73歳。埼玉支部所属。59年6月登録の5期生で現役の同期生はなし。通算成績は勝率6・54、2連単率44%、優勝120回。生涯獲得賞金は16億3575万円。1メートル63、50キロ、血液型A。

 ▼中道善博氏(スポニチ本紙評論家)スタートが早かった加藤さんの名前が出走表にあると、私も行く覚悟を決めたものです。殿堂入りエキシビションレースで対戦する日を楽しみにしています。

 ▼平石和男 一緒に笹川賞の優勝戦にも乗れ、最後の節ではワンツーも決められました。ゆっくり休んでください。

 ▼江口晃生 取り組む姿勢が凄くて、ずっと見習ってきた。ボートの神様であり、教科書のような存在。加藤さんを見ていたら、体が痛いなんて言えなかった。寂しくなる。

 ▼松井 繁 後輩にも紳士的で優しい先輩であり尊敬していた。凄い記録だと思います。

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2015年5月8日のニュース