【朝日杯FS】ムーア騎乗アジアエクスプレスが豪快に突き抜ける

[ 2013年12月16日 05:30 ]

外から一気にかわしたムーア騎乗のアジアエクスプレス(手前6番)が無傷3連勝で朝日杯FSを制した

 芝、ダート二刀流の超特急が誕生した。今年で中山開催は最後となる2歳王者決定戦「朝日杯フューチュリティS」が15日行われ、ダートでデビュー2連勝中の4番人気アジアエクスプレスが豪快に突き抜けて快勝した。芝未経験馬による芝G1優勝はグレード制導入の84年以降初の快挙。騎乗したライアン・ムーア(30=英国)はジャパンC(ジェンティルドンナ)に続く今年2度目のJRA・G1優勝となった。

【レース結果】

 名馬は馬場を選ばず。520キロを超すダート馬らしい筋骨隆々の巨体が芝でも圧倒的な末脚を繰り出した。手綱から伝わる無限のスケール。ムーアは顔を紅潮させた。「芝でもダートでも走れるなんて…。特別な馬だ」。開口一番、手塚師にそう告げると早口で続けた。「凄すぎてね…底が見えない」

 デビュー2連勝の東京ダートから一転、小回りの中山芝でのG1。2角から向正面にかけての下り坂で流れに乗れない。「大きな馬、大きな完歩だから(小回りの芝に)戸惑った」。ムーアが振り返った最大の難所。手綱を懸命に押す姿がターフビジョンに映ると、スタンドから「鈍行列車じゃないか」の声さえ漏れた。だが、直線で外に持ち出すと超特急へと変身した。先に抜け出したショウナンアチーヴを力任せに差し切り、1馬身1/4差つけてVゴール。「直線坂上でスピードが違うので差せると思った。まるでデクラレーションオブウォーだ」。ムーアは母国イギリスで芝のG1・2勝を挙げ、米国のダートG1・ブリーダーズCクラシックでも3着に好走した世界的名馬の名を口にした。

 傍らで手塚師が「してやったりですよ」と笑った。デビュー2連勝後、ダートの交流G1、全日本2歳優駿(18日、川崎)を目指した。だが登録馬過多で除外。それでも前向きに思い直した。「身のこなしが軽いから芝にも対応できる。G1でも通用するかもしれない」。朝日杯出走を正式に決めたのはレースのわずか4日前だったが、思惑通り、芝、ダート二刀流の走りを演じた。

 栴檀(せんだん)は双葉より芳し。「G1級の凄い外国産馬だ」。デビュー前の調教。猛時計で厩舎の先輩を子供扱いしても息ひとつ乱れない様子を見て、手塚師は驚きの声を上げた。G1獲りの予感はそれからわずか3カ月で現実となった。

 ダートを意識していたため来春のクラシック登録はない。「芝のG1で結果を出したとはいえ、ダートの方がよりパワーを生かせる。苦手な芝でも勝ったところが一番凄い」とムーアは言う。追加登録料(200万円)を支払って来春の皐月賞、ダービーを目指すのか、あるいは交流G1ジャパンダートダービーを頂点とするダート戦線を視野に入れるのか。「いろいろな選択肢があって、すぐには決められないが夢は広がる」と手塚師。ムーアは「この馬に足りないのは経験だけ。経験さえ積めばもっと強くなる」と言う。来年の3歳戦線をリードしていく馬は決まった。魅力にあふれた二刀流の超特急だ。

 ◆アジアエクスプレス 父ヘニーヒューズ 母ランニングボブキャッツ(母の父ランニングスタッグ)牡2歳 美浦・手塚厩舎所属 馬主・馬場幸夫氏 生産者・米ブリーダーオカラスタッド 戦績3戦3勝 総獲得賞金8813万1000円。

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