【エリザベス女王杯】金縛り…これが展開の怖さ

[ 2009年11月16日 06:00 ]

<エリザベス女王杯>クィーンスプマンテが粘り込み、鞍上・田中博康は笑顔のゴールイン

 【武邦の名人解説】これが展開の怖さ。逃げ切ったクィーンスプマンテと2番手から2着に粘り込んだテイエムプリキュアが、3着に敗れたブエナビスタより強いとは、恐らく誰も思うまい。だが、これは夢物語ではなく現実に起こったこと。競馬にはこうした“魔さか”の結末がしばしばある。だからこそ面白いのだが、今回ほど鮮やかに“行った行った”で決まるのは珍しい。

 原因は3つ。(1)大逃げを打ったのが1頭ではなく2頭(2)距離が1800メートルや2000メートルではなく、外回り2200メートル(3)3番手リトルアマポーラが動かなかった。まず(1)だが、いくら人気薄でも1頭なら3角で射程圏、直線で吸収される。ところが伏兵の2頭が、ぱっと見には競っているように映った。錯覚というか、マジックに近い。その証拠に、先行2頭だけが平均ペースで、3番手以降の各馬は前半スローに近かった。
 (2)の距離なら、たとえ2頭でも後続の追い上げはこんなに遅れなかった。そして(3)。アマポーラのスミヨンはブエナが後ろにいるので、自分から動いて差されたら…と思ったに違いない。まるで伝染でもしたかのように、後続もじっとしていた。
 いわば金縛り状態。これを真っ先に、ほどきにかかったのはカワカミプリンセスの横山典騎手。3角手前から進出を開始。呼応するようにブエナの安藤勝騎手も上昇。しかし時すでに遅し。ブエナが上がり3F32秒9の脚を駆使しても、前2頭が36秒8~9で逃げ込む展開。初戴冠の田中博君には「おめでとう」と言いたいが、もう一度ブエナに勝つのは至難の業だ。(JRA元調教師)

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2009年11月16日のニュース