松尾和子さん遺作 没後21年ようやく発売…長男死去も明らかに

[ 2013年9月26日 06:00 ]

生前の松尾和子さん

 1992年9月に他界した歌手、松尾和子さん(享年57)が生前に作詞した遺作「かわいい女」が没後21年でようやく発売された。命日の25日、作曲家らが都内の菩提(ぼだい)寺を訪れて墓前に報告したが、薬物事件を起こして服役した長男の政和さんも、2年前に亡くなっていたことが分かった。

 松尾さんは60年代に「誰よりも君を愛す」などを大ヒットさせたムード歌謡の女王。ジャズマンとの間に誕生した政和さんが91年に覚せい剤取締法違反で逮捕され実刑判決をうけたことで、バッシングを受けた。しかし「息子は私の宝」とかばい続け失意の中、翌年に自宅階段から転落して亡くなった。長男の服役中に起きた悲劇だった。

 今回発売された「かわいい女」は、親交のあった作曲家の青山八郎氏(80)が、松尾さんに作詞を依頼していたもの。91年にほぼ完成していたが、長男の薬物事件で発売が見送られた。しかし、転落事故の10日前、松尾さんからカセットと共に書き直した詞が、便箋4枚にまとめて青山氏に郵送されていた。その後、本人の急死で未発売のまま歳月が経過していた。

 昨秋、青山氏が郷里・福島の知人から歌手の杉真里(年齢非公表)を紹介され、艶のある声質にほれこみ、同曲を先月にレコーディング。冒頭のナレーションには松尾さんの肉声を、エンディングには歌声を収録した。

 青山氏はこの日、「やっとできたよ」と墓前に報告したが、その墓石には政和さんの戒名も刻まれていた。「私の倅(せがれ)と同じ年。松尾さんには“子供を甘やかすなよ”といろいろ言ったんだが」と松尾さんの心情に思いをはせ、悔しそう。「聞こえましたか。応援してください」と祈りを込めて合掌した。杉は「プレッシャーもあり、今までにない特訓をしたので感無量です」と話した。

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