沙保里 山中勝利に感動…警戒されても貫き通す「神の左」と私の「タックル」
今月、米ラスベガスで行われたレスリング世界選手権で五輪を合わせた世界大会V16を達成した吉田沙保里(32=ALSOK)が、同い年の山中の試合を初観戦した。「タックル」を武器に個人戦200連勝中の女王は、「神の左」を持つ無敗王者の激闘をどう見たのか。観戦記を寄せた。
山中選手、お疲れさまでした!ボクシング観戦は何度かあったんですが、山中選手の試合を生で見るのは初めてでした。同い年で体重もほぼ同じくらい(吉田は53キロ級、バンタム級のリミットは53.524キロ)。祝勝会などに呼んでいただいていたので親交はあったんですが、普段の優しい、凄くいい人という感じから、戦う男の顔になっていたのが印象的でした。
感動しましたよ。最後までハラハラしたんです。どちらが勝ったかって。でも、最後にはどれだけ負けたくないか、が勝敗を分けたように感じました。序盤から、モレノ選手の構え方が独特で「相当、打ちづらいだろうなあ」と思ってはいました。私もディフェンス能力が高い選手と対戦することがあるんですが、レスリングは3分2ラウンドだけ。短時間の間に、攻略法を見つけるんです。その引き出しの多さこそが、ベテランの武器でしょ?山中選手、10回に「神の左」をヒットさせましたけど、たぶん相当考え抜いた末の一撃だったんだろうなあ、と想像します。
私にとっての「タックル」、山中選手にとっての「左」は世界中に警戒され、そう思い通りにはいきません。でも、簡単にスタイルを変えることはできないんです。だからこそ、自分の武器を磨いていく。それが頂点にいる者のやるべきことだろうと思います。
勝ち続けるというのは、しんどい。でも、負けないということは、何物にも代え難いプライドです。山中選手が無敗を守ったことで、私も大きな刺激を受けました。リオ五輪出場が決まる12月の全日本選手権、やっぱり優勝しかない!とあらためて思いました。(レスリング世界V16、ALSOK所属)
◆吉田 沙保里(よしだ・さおり)1982年(昭57)10月5日、三重県生まれの32歳。全日本王者だった父・栄勝さんの指導で3歳で競技を始める。02年にシニアの世界選手権初出場初優勝。以降、世界選手権は今年のラスベガス(米国)大会まで55キロ級、53キロ級合わせて13連覇。04年アテネ、08年北京、12年ロンドンは55キロ級で五輪3連覇を達成している。12年に国民栄誉賞受賞。「霊長類最強女子」とも呼ばれる。1メートル56。
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