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山中 逆転V9!「神の左」見切られ苦戦も2―1判定勝ち

[ 2015年9月23日 05:30 ]

12回、アンセルモ・モレノ(右)を攻める山中

WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦 ○王者・山中慎介 判定2―1 ●同級2位アンセルモ・モレノ

(9月22日 東京・大田区総合体育館)
 王者・山中慎介が9度目の防衛に成功した。WBA王座を12度防衛し、1年前までスーパー王者だったアンセルモ・モレノ(パナマ)に2―1の判定勝ち。打っても当たらない高い防御力からスペイン語で「ファンタスマ」(幽霊)の異名を持つ難敵を退け、バンタム級頂上決戦を制した。日本ジム所属選手としては、勇利アルバチャコフに並ぶ歴代4位の防衛回数となった。

 左、左、また左。姿を見せない幽霊に王者は“神の左”を連射した。だが、空砲は次第にモレノを勢いづかせ、8回終了時の公開採点でジャッジ2人がドロー、1人が相手を支持。逆転を狙って前に出たが、9回には左カウンターをもらいぐらついた。しかし、10回にようやく目を覚ますと、左ストレートが顔面を捉え、右フックを続けた。終盤になって鬼と化した挑戦者にワンツーの嵐。クリンチで逃げる相手を追い続けた。11回には判定をひっくり返し、判定勝利をもぎ取った。

 簡単に勝てないことは分かっていた。それでも勝負師として強い男と戦えることが喜びだった。1回が終了し、口にした言葉は「楽しい」。相手はWBA王座を12度防衛した実力者。「神の左」と自ら「神の目」と自負するモレノとの神対決は、両者一歩も引かない激闘となった。世界戦で77・7%のKO率を誇ってきた強打は「モレノに殺された」と振り返ったが、空転しながらも「必死」で繰り出した左が勝利の女神を振り向かせた。

 神に近づく作業は終わりを知らない。王座獲得から約4年間、下半身の筋力を高め、その筋力を瞬間的に生かすトレーニングを続けてきた。高重量を用いる場合と、軽い重量を爆発的に持ち上げる両パターン。そこにジャンプ系のプライオメトリクスというスピードアップのエクササイズを組み合わせた。「床からの反力を拳に伝えるのが抜群にうまい」。中村正彦フィジカルトレーナーは長所を伸ばす筋力トレを行うことで瞬発力を極限まで高め「右足の踏み込みの速さと強さ」から生まれる“神の左”にパワーを注入してきた。

 ダウンを奪うことはできなかったが、研ぎ澄まされる拳は次なる戦いで威力を増す。頂上決戦を制し、帝拳の本田会長は「本人が外国に行きたいから何とか考えたい」と近い将来には海外進出する意向を示した。モレノに勝利した実績は、単なる防衛戦とは比較にならないほどの価値を持つ。「もう少し差を見せつけるつもりだった。悔しさもあるけど2―1でもホッとした」。激闘を終えた王者は虎の子のベルトを大切そうにケースにしまい込んだ。

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