中畑清氏「DeNAの顔」佐野に首脳陣は配慮を「そらそうよ。チャンスで下げていいバッターじゃない」

[ 2023年8月8日 05:00 ]

阪神戦の7回1死二、三塁、佐野(7)に代えて楠本(左端)を代打に送った三浦監督(影・大森 寛明)
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 【キヨシスタイル!】見たくない光景だった。6日の阪神戦。DeNAは1点を追う7回1死二、三塁のチャンスで佐野を下げ、楠本を代打に送った。ベンチに下がり、悔し涙を浮かべる佐野。ここ数年味わったことのない屈辱だったに違いない。

 岡田監督が「ラッキーやと思ったよ。そら佐野を代えるんやから」と振り返った代打策。そらそうよ。どんなに調子が悪くても、佐野はあの場面で下げていいバッターじゃない。

 メジャーに挑戦する筒香から4番・レフト、さらにキャプテンをまとめて引き継いだ2020年に打率・328で首位打者獲得。昨年まで3年連続3割をマークしてきた。宮崎、牧と並ぶ打線の柱。よほどのことがない限り代えちゃいけないチームの顔だ。

 巨人の打撃コーチ時代、実績ある選手への代打を長嶋監督に進言したことがある。調子が悪いだけじゃなく、凡退しても淡々として悔しがりもしない。このまま打たせたらチームの士気に影響すると判断し、かなりの覚悟を決めてのことだった。

 佐野は違う。下げられてもベンチの最前列に座り、身を乗り出して楠本に声援を送った。試合終了の瞬間まで大声を出して仲間の応援を続けていた。なかなかできないことだよ。リーダーシップを持った男なんだ。

 確かに今年は不振が続いている。目下、打率・257。開幕から不慣れな1番を任されたのが少なからず影響していると思う。出塁率を期待しての1番起用だったらしいが、今回の件も含めて考えると、首脳陣の中に「佐野はチャンスに弱い」という思い込みがあるような気がする。

 私は佐野がチャンスに弱いとは思わない。今年の得点圏打率は・231だけど、過去3年は20年から・315、・287、・279。打点も同じく69、72、72といずれもチーム3位以内に入っている。あいつを使い切って負けたらしようがないと思える選手だ。

 最大12あった貯金を使い果たし4位に転落したDeNA。CS、日本シリーズはまだ十分目指せる。佐野は必要不可欠な戦力。首脳陣はそれなりの配慮、気遣いをしてほしい。今回の件が尾を引かないように。ズルズル沈んでいくのは見たくない。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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