猛打賞の中野に託す「ネバサレ打線」の再現 上下位切れ目のない攻撃で18年前の「夢」を

[ 2021年4月12日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3ー2DeNA ( 2021年4月11日    横浜 )

<D・神> ヒーローインタビューを終えスタンドのファンに手を振る中野。このままレギュラーを獲得し、「恐怖の下位打線」の一角を担えるか。
Photo By スポニチ

 【畑野理之の理論】ドラフト6位の中野拓夢がすごい。2試合連続スタメンで4打数3安打。右へ左へ中へとすべての方向にヒットを打ち分けた。プロ初の猛打賞で打率・529まで跳ね上げた8番打者は、得点圏打率・700(10打数7安打)の7番梅野隆太郎と、恐怖の下位打線を形成している。

 「7番・捕手」「8番・遊撃」といえば、星野仙一監督で18年ぶりにリーグ優勝した03年を思い出す。

 ★7番・矢野輝弘(当時)はリーグ3位の打率・328、14本塁打、79打点。

 ★8番・藤本敦士は打率・301、0本塁打、36打点。

 チームスローガンだった「ネバーネバーネバーサレンダー(決してあきらめない)」から取って、ネバサレ打線と呼ばれた。総本塁打141はリーグ5位だったものの、チーム打率・287はリーグトップで、総得点728もダントツ。数字からは本塁打攻勢ではなく、つないでつないで得点を重ねたのがわかる。7番矢野→8番藤本がその象徴だった。

 3番金本知憲(・289)

 4番桧山進次郎(・278)

 5番アリアス(・265)

 6番片岡篤史(・296)

 中軸は重量級も打率はみな3割に少し届かなかった。その分、下位打線からチャンスを作って、打率・340で首位打者の1番今岡誠(当時)、打率・312の2番赤星憲広に回した。上位下位どこからでも得点可能な、切れ目の見えない打線だった。

 2―0の4回に6番佐藤輝明の右中間二塁打を梅野がバントで送って、1死三塁から中野が左前適時打。終わってみれば、6番以下で奪ったこの3点目が1点差の逃げ切り辛勝では効いていた。マルテ、大山の3、4番にまだエンジンがかかっていない今、貴重な得点源となっている。

 その矢野がいまは監督として指揮を執り、藤本が内野守備走塁コーチとして三塁ベースコーチに立っている。この日、10安打のうち、ノーアーチで長打も佐藤輝の二塁打1本だけだったが、それでも勝った。18年前を思い出し、雰囲気が似てきたというのは、まだ早計だろうか…。
 =敬称略=
 (専門委員)

続きを表示

2021年4月12日のニュース