広島・石原慶 強くなるために、勝つために、捕手陣の私利私欲を超えた関係性を築いた

[ 2020年10月17日 05:30 ]

笑顔の広島の石原慶(右)と会沢
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 14年春の日南キャンプが転機だった。広島・石原慶が会沢に「メシ食べに行くか?」と初めて声をかける。力を認めた後輩はまだ1軍に定着できずにいて、必死にもがいていた。何かキッカケになれば…と思って誘い、2人だけで会話を重ねた。

 ポジションを脅かすかもしれない存在。それでも石原慶は「お互い頑張って、いい成績を残せばいい。僕はそう思う」。長い低迷期を脱し、チームは前年に初めてCSを経験。強くなるために、勝つために、良かれと思って取った行動だった。

 黒田博樹、新井貴浩両氏と同じ野球観を持ち、求められれば助言を惜しまないが、差し出がましく映る行為を嫌う。ただ、晩年に若い頃を回顧し「勇気を出して自分から先輩に話を聞きに行っていたら違ったかも」と漏らした一言は印象的だ。

 素晴らしい系譜がある。坂倉は初昇格時、あいさつした磯村に「オレじゃなく(正捕手の)会沢さんを見ろ」と返された。磯村もまた同様の状況で、会沢から「オレじゃなく石原さんを見て勉強しろ」と言われている。捕手陣の私利私欲を超えた関係性。それこそが石原慶の望んだものだ。好漢がまた1人…。寂しさを拭えない。(広島担当・江尾 卓也)

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2020年10月17日のニュース