白球を追い続ける山崎まり 女子野球の未来のために

[ 2020年1月28日 09:30 ]

<西武ライオンズ・レディース第1回セレクション>守備で軽快な動きを見せる元アストライア・山崎まり(撮影・西尾 大助)
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 初めて女子野球を取材した。4月1日に始動する「埼玉西武ライオンズ・レディース」の第1回セレクションが今月19日に行われた。参加した8人の中で、ひときわ異彩を放っていたのが元プロの山崎まり内野手(30)。まずオーラが違う。1つ1つの動きに自信が見え、自分のリズムを持っているように感じた。フリー打撃でも鋭い打球を連発していた。

 15年には打率・340をマークし最多打点とベストナインにも輝いた。「プロでやっていたという自覚もある。ユニホームを着る以上は変なプレーはできないので、しっかりやろうと思ってきました」と覚悟を持って臨んでいた。

 昨年11月、日本女子プロ野球機構に所属する71人のうち36人が退団。山崎も埼玉アストライアを離れることとなった。「現役を希望していた。自分としてはもう何年かは現役をできるような体の状態だった」。まだ燃え尽きていなかった。

 オフには知人を通じて知り合った日本ハム・杉谷とオーストラリアで2年連続の自主トレ。「準備の仕方や開幕まで持っていく練習の組み立て方は凄く勉強になった」と収穫を得た一方で、感じたことがあった。「女子野球はまだ野球に集中できる環境が凄く少ない。早く女子野球もこういう環境で野球がしたい」。そのために残りの野球人生をささげる。

 女子野球界にとって埼玉西武ライオンズ・レディース誕生の意義は大きい。プロ野球のチーム名を冠した女子野球チームは12球団初。西武が公認し、ユニホームやボールなどの野球用具、室内練習場を提供する。今後、他球団にも同じような動きが生まれるかもしれない。

 ただ金銭的な支援はないため、多くの選手が働きながら競技を続ける。だが、山崎は仕事を探す予定はないと言う。「年齢も年齢なので、仕事をしながら野球のレベルを維持するというのは難しい。収入が減ってでも野球に懸けたい」。強い意志をのぞかせた。

 野球が大好きな女子が野球を続けていける環境をつくりたい。その思いが山崎を突き動かす。「プロ終わっても現役をやる意味を考える中で、自分が選手をやることで次の道が広がるようなチームでやりたいと思った」と新たな道への挑戦を決めた。

 女子野球の競技人口は増加傾向。だが大学や社会人で選手の受け皿となるチームが不足しているのが現状だ。「皆さんに応援され、NPBの他の球団でもこういう形ができるとか新たな一歩になるチームになっていきたい」。女子野球の未来のために、白球を追い続ける。(記者コラム・岡村 幸治)

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