松井秀喜氏 巨人軍は球界の見本であれ「強くあれ、紳士たれ、米野球に追いつき追い越せ」

[ 2019年4月30日 08:30 ]

松井秀喜氏 単独インタビュー(1)

13年5月5日、国民栄誉賞授賞式で長嶋終身名誉監督(手前)とオープンカーで場内一周する松井氏(撮影・荻原 浩人) 
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 野球人気は永久に不滅です!巨人やヤンキースで活躍し、日米通算507本塁打を放った松井秀喜氏(44)が、スポニチ本紙の単独インタビューに応じた。星稜入学(平2)から日本の野球殿堂入り(平30)まで、野球人生を通じて「平成」を沸かせたスラッガーが、「令和」への改元を前に古巣・巨人、日米球界、次代を担うスターへの思いを熱く語った。 (聞き手・大林 幹雄)

 ――92年(平4)の巨人入団会見で「サッカーや相撲に子供たちの心が動いている。そんなファンや小さい子に夢を与える選手に」と抱負を口に。時代の変化を感じていた。

 「Jリーグが(93年に)できることと、若貴ブームが絶頂期。野球が話題の中心になるよう、自分も頑張りたいということだったんだと思います」

 ――プロ野球選手の影響力、責任を感じていたからこその発言。

 「責任というところまで(の思い)から出たというわけではないと思います。夢を与えられる選手になりたいという抱負ですよね。自分がプロ野球選手に憧れていたので、今度は憧れてもらう存在にという、それだけですよ。そこに、そういう社会の状況があったという」

 ――巨人では長嶋監督の指導を受け、00年(平12)には王監督率いるダイエーとONシリーズを戦った。昭和に築かれた球団の歴史の重さを感じてきた。

 「それはそうでしょう。巨人はそういうチーム。今にも引き継がれていると思いますよ。世の中の状況が変わっても巨人は歴史が最も古いチームなので。ONがいたからこそ巨人の存在がより大きくなったと思います。だからこそ、そのシリーズは特別でした」

 ――特別というのは例えばどんな部分で。

 「当時は(全国ネットの)テレビ中継を巨人戦しかやらないわけです。全国どこに行ってもジャイアンツファンはいる。でもそれは、簡単に言うとやっぱり長嶋さん、王さんがつくった遺産だと思います」

 ――日本シリーズ制覇が9年連続で途切れた74年(昭49)の生まれ。変化は感じた?

 「良くも悪くも、ジャイアンツはV9の遺産があるんじゃないでしょうか。今でも。特別なチームなのは間違いない。でも、それを選手やチームの関係者が、悪い意味で捉えてしまうところもあるんじゃないかと。慢心というか。せっかくの遺産を、間違った捉え方をしている側面もあったと思います」

 ――悪い方向に出るケースとは。

 「いっぱいあったんじゃないですか。チームにも選手個人個人にもあったと思います。自分もそれは例外ではありません」

 ――チーム成績か、不祥事に関してか。

 「気持ちの持ち方ですね。不祥事というのは、気持ちの持ち方の結果として出てくるわけです」

 ――新たな世代へ、どういうジャイアンツ像を求めるか。

 「確かにOBの一人ではありますが、私はそんなことを求める立場ではありません。応援しているだけですよ」

 ――球界を引っ張ってほしい思いは。

 「そこまでは考えていません。ただ、見本となるような存在でいてほしいと思います」

 ――ON時代のように戻るのが理想か。

 「それは無理だと思います。長嶋さんと王さんがいたから成り立っていたんじゃないでしょうか。今の時代に同じくらいの大きな存在が、巨人という一つのチームに現れるのは、不可能に近いんじゃないかなと思います。長嶋さん、王さんの功績が偉大すぎるのですが。昔の巨人を目指せというのではなく、(初代オーナーの)正力松太郎さんが言ったように、強くあれ、紳士たれ、そしてアメリカ野球に追いつき追い越せという、そういうものを追い求めていった方がいいと思います。気持ちの、一番最初の持ち方として」

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2019年4月30日のニュース