名伯楽・小出氏と巨人・阿部の言葉で考えた“言葉のニュアンスの違い”

[ 2019年4月30日 10:30 ]

巨人・阿部
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 高橋尚子さんや有森裕子さんらを育てた陸上女子長距離の名指導者、小出義雄氏が24日に死去。訃報翌日の各紙の紙面は名伯楽を取材経験のある記者が、追悼文を寄せていた。なかでも、本紙に掲載されたスポーツライター・二宮清純氏の寄稿にあった小出氏の言葉が印象的だった。

 「“伝えた”と“伝わった”は違う。僕はただ“伝えた”だけで“伝わった”ことまでは確認していなかった」

 マラソン初挑戦した教え子がゴール直前で、他選手2人とともにもつれるように転倒。小出氏はレース前日に転倒地点のアスファルトの不整備が気になっていたため、「気をつけろよ」と本人に伝えていた。しかし、悪い予感が的中してしまった。後日、二宮氏が「監督はきちんと注意事項を伝えていた。責任は果たしていると思いますよ」と話すと、前述の言葉が返ってきたという。

 小出氏の言葉から、巨人・阿部慎之助捕手の言葉を思い出した。

 スポニチが発行する小学生向けのフリーペーパー「スポニチジュニア」の取材で2月にインタビュー。子供たちへのメッセージをお願いすると、「夢を叶えるために、考えることが大切。“どうしたらうまくなりますか”と“どういう練習がありますか”は違う」と語ってくれた。

 全国各地で野球教室を開催すると“どうやったらホームランを打てますか”などと極論を求めてくる子が多いという。「その答えが分かったら、誰だってホームランが打てる。だから、『たくさん練習しているからかな』と答えるしかない。“そのためにどういう練習がありますか”なら答えられるんだけどな」と話してくれた。

 似ているようで、違う。小出氏と阿部選手から、記者として責任を持って言葉のニュアンスの違いをしっかり伝えていかないといけないなと、気を引き締め直した。(記者コラム・青森 正宣)

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2019年4月30日のニュース