広島・丸 大切なことを思い出せた9―0からの敗戦「いい負けだった」

[ 2018年1月3日 13:02 ]

広島・丸佳浩外野手×野村謙二郎氏 新春師弟対談(下)

野村謙二郎氏(左)との新春対談で「日本一」を目標に掲げた丸
Photo By スポニチ

 野村 チーム全体のことも振り返ろうか。一昨年と昨年の優勝では全然違うでしょ。

 丸 違います。一昨年は気が付いたら首位にいて、優勝できるのでは…という空気を感じた時から一気に決まった。噛みしめる余裕はなかったです。

 野村 ほんとに優勝したのか…みたいな。

 丸 はい。昨年は正反対。開幕後に10連勝しましたが、ジョンソンが離脱したりして、一昨年の勢いを感じていなかったです。メディアは盤石などと評していましたけど、やっている方は一杯一杯。

 野村 そうだね。ザキ(中崎)も離脱したし、ジョンソンも本調子じゃないし。

 丸 一つ間違えると勝敗がひっくり返る試合も多かった。それを逆転勝ち(41回)につなげられたのは、チーム力が付いてきたからかもしれませんが。

 野村 謙虚に言ったと思うけど、力は付いていると思うよ。丸は個人的にも自信をつけたと思うけど、チーム的にはどうだった?

 丸 投手のことはわかりませんが、野手に関して言えば考え方がしっかりしてきたし、皆が堂々とプレーできるようになった感じはあります。それは自信からだと思います。

 野村 横浜で3試合連続サヨナラ負け(8月22〜24日)があったよね。あの時のチーム状態は最悪じゃん。

 丸 確かに雰囲気は悪かったですね。

 野村 ベンチはどんな感じだったの?

 丸 試合後は重い空気がありましたけど、日が変われば切り替える。それがウチの良さかな…と。3連敗しましたが、場所が変わった途端に“ハイ、終わり”みたいな。

 野村 なるほど。

 丸 基本は、次に向けてしっかり準備し、いかに試合で出し切るか。それを143試合繰り返した感じです。そこは、チームとしてブレていなかったのかな…と思いますね。

 野村 それは、結果が付いてきたから思えること? 結果が出たからじゃなくて、チームとしてブレなくなった感が強い?

 丸 一昨年がそういう方向性で入り、優勝できたので自信になりました。昨年も続けよう、続ければ結果につながる…と。皆がそう信じてプレーできたかな…と思います。

 野村 連覇した昨季のキーポイントになった試合を挙げると?

 丸 やっぱり、甲子園の9点差をひっくり返された試合(5月6日)じゃないですか? その時は横浜のサヨナラ3連敗よりも雰囲気が悪かったです。

 野村 それは何で? 野手からすれば“投手は何やってんだ”って思うじゃない。そういうギクシャク?

 丸 そんな空気も少なからずありました。

 野村 わかるよ。

 丸 ただ、先発陣は若いので仕方ない。そういうことより、むしろ9点取ったことでホッとした。ボクもそうですけど、“勝った、もらった”と思ってしまったので、そういうのは止めようと。試合後、琢朗さんが“こういう試合は絶対やってはいけない”と。

 野村 ピッチャーうんぬんじゃなく、お前たちが気を抜いていたんじゃないか…と。

 丸 そうです。“この試合があったから、優勝できた…と言えるように頑張ろう”と言われ、以降、ボクら野手陣は何点取ろうが、次の1点、次の1点というスタイルでずっとやっていました。

 野村 たとえ何点取っても、自分の打席を大事にして次につなげるんだ…と。

 丸 琢朗さんは“野球は助け合いのスポーツ。経験の少ない投手が多いから、野手陣が投手を助け、育てるんだ”と。そういう思いでやっていました。

 野村 いい薬だね。9―0からの敗戦は、大切なことを思い起こさせてくれたんだ。

 丸 自分たちを戒められた試合。いい負けだったと思います。

 野村 その話を聞いても、丸はリーダーとしてチーム全体を見られるようになったな…と感じるよ。優勝する過程には数々のドラマがあり、ツラいこともある。美味しいところを持って行く、新井さんの七夕の奇跡(7月7日、ヤクルト戦。3―8の9回に3点を返し、なおも2死一、三塁で小川から代打逆転3ラン)なんていう、大したタイトルがついた試合もあった。

 丸 そうですね。ありましたね(笑い)

 野村 今のチームにはタレントがそろうけど、その中で新井のあのキャラはどう? 裏表が激しいでしょ?

 丸 いやいや、あのまま、グラウンドのままです、ハイ(笑い)

 野村 ベンチに控えている時、たまにテレビに映ると、あの年で一番声を出している。スタッフの顔をチラチラ見ながら。なかなかいないよ(笑い)

 丸 スタッフの顔を見ているか…はわからないですけど、40歳でベンチで声を出すなんて、なかなかできないですよ。でも、新井さんがそうやって声を出すのを見ているから、若い選手も声を出しますし、そういう雰囲気をつくってくれるのが新井さんですから。

 野村 ま、冗談で言っているんだけどね。新井が帰って来たのはBクラスの年かな。

 丸 そう15年です。

 野村 クロ(黒田)も帰って来た。翌年、優勝した時に“黒田と新井の存在が大きかった”と皆が言うんだけど、じゃあ1年目はどうだったのか。聞いたのは、お互いに気を遣っていた…と。

 丸 そうです。ボクはジムが一緒なので、新井さんが面白い人なのはわかっていましたけど、そうじゃない選手は15年が顔合わせみたいな感じ。新井さん自身、チームがどう変わっているのかわからなかったと思います。

 野村 古巣といっても、メンバーがガラッと変わっているし。

 丸 気を遣っていた感はありましたね。

 野村 1年目が終わり、春のキャンプを迎えて少しずつ遠慮がなくなった感じかな。

 丸 キクとかは最初から黒田さんや新井さんにバンバンいって、それを皆が笑っている感じでしたけどね。

 野村 キクなりに、あのキャラで雰囲気をつくっていたんだ。

 丸 そうですね。

 野村 じゃあ最後はセ・リーグ5球団の印象、思いを聞かせてもらって締めようか。DeNAにはCSファイナルで負けた悔しさもあるだろうし。

 丸 ベイスターズには勢いを感じます。

 野村 何の勢い?

 丸 打者です。打ち始めたら止まらない。シーズン中からそうでした。阪神はブルペン陣が強いので、いかに先発を打ち崩すか。

 野村 前半からしっかり点を取る…と。

 丸 個人的には、ヤクルトに興味があります。どう変わるのか。

 野村 石井、河田コーチが移籍したから。2人の指導で自分たちが変わったから。

 丸 同じように教えると思うので、ヤクルトの選手がどうプレーに出してくるのか。

 野村 聞くところによると、秋は今までの2〜3倍バットを振らされたらしいよ。

 丸 中日はナゴヤドームでどう勝つか。あの球場の勝ち方を知っているんですね。投手戦、接戦で1、2点取られて負けた試合が多い。アトはどこがありましったっけ?

 野村 巨人。そんな言い方すると、安パイみたいに聞こえる。

 丸 いや、いや、いや(笑い)。巨人も投手がいいんですよ。強い球を投げる投手が多い。マシソン、カミネロ、先発だと菅野、田口。昨年は相性がよかったけど、年が変わるとわからない。

 野村 ここ3年やられているから、対カープはすごく意識してやってくると思うね。

 丸 この3年は勝っていますが、その前はやられている。ボクにはそのイメージがあるので嫌ですね。

 野村 スタートをうまく切り、カープはやっぱり強い…と早い段階で思わせることが大事。そのために、秋のキャンプで技術を磨いてきたんだからな。

 丸 はい。

 野村 個人的に注目するのは阪神。若い選手を使い、オレが(広島の監督を)やっていた時と似ている。フレッシュさという意味での阪神はどう?

 丸 確かに若い選手は出てきていますが、ミスした時は特に、熱狂的な応援が重荷なのかな…と感じる時があります。マツダの応援も熱狂的ですが、甲子園とは少し違う。

 野村 マツダの雰囲気づくりは最高。あれは大きな味方だよね。

 丸 そう思います。力になります。

 野村 試合中にジーンとくることある?

 丸 あります。鳥肌が立つみたいな。

 野村 それも、自分たちがつくり上げたもの。一生懸命プレーすることに対しての声援だから。ま、力まず、丸は丸のスタイルでやればいい。目指すは3連覇と日本一。伝統を残していってくれれば…と思います。

 丸 ありがとうございます。頑張ります。

続きを表示

2018年1月3日のニュース