金本監督 4番は「大山が一番近い」 落合氏「福留ではない。出続けてもらわないと」

[ 2018年1月3日 09:31 ]

阪神・金本監督 落合博満氏と新春対談2

笑顔で初対談した落合氏(右)と金本監督
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 ――逆に中日・落合監督は、阪神選手・金本の印象はどうだった?

 落合 まず一番、使い勝手のいい選手なんだろうなと。休まないというのが監督として一番、使いやすいんだよ。きょうの先発メンバーを書かないといけないって時に“4番打者がきょうダメ”と言われた時の対応の仕方っていうのは、経験した人しか分からないと思う。いなきゃいけない選手が、そこから外れた時の対応というのはね。今、金本が一番苦労する部分じゃないか。選手がいっぱいいる中でも4番というのは、格で言えば横綱級。別格。そこにずっと居座ってくれるというのは存在感なんだと思う。

 ――2人は現役時代に強打の4番打者だった。チームの勝ち負けを背負うまさに打線の中心だった

 落合 4番は誰を考えているの?

 金本 自前で作りたいんですけどね。

 落合 それは考えない方がいい。

 金本 勝手にできるもんですか?

 落合 ダメだったら外国人を連れてくる…でもいい。本当に自前で4番を作りたいなら、3番と5番にキチッとしたヤツを置いて、4番目という作り方をしないと。3番と5番が弱くて、4番に比重が掛かったら、今の阪神の選手で、それをはねのけられる選手は、まだいないと思う。あとは、4番に何を求めるか。

 金本 やっぱり打点ですね。

 落合 それ(求めるもの)によって4番像が変わってくるかもしれない。4番は誰にしたい?大山?

 金本 僕の中では大山が一番近いかなと思いますね。

 落合 だったら3番と5番にキチッとしたものを置いとけば力を出すかもわからない。(4番が)福留ではないとは思う。ちょっと使い方を見ていれば、たまに休ませてやりたいというのが、あるでしょう。

 金本 はい。

 落合 4番はそれじゃいけないんだわ。

 金本 そうですね。

 落合 出続けてもらわないと。だから生え抜き4番を作りあげたいのなら、そういう作り方でもいいと思う。いいじゃん、今年のスローガン。『何があっても4番は大山』ってね。

 金本 ハッハハハ。

 落合 アドバルーンを今から上げてプレッシャーを掛けといてもいいんじゃないの。本人がそれぐらいの気になってやってくれるかどうかだよ。

 金本 彼はやる子ですね。

 落合 大山にかけてみる。それは監督の腹一つ。

 金本 ただ、この大山も固定できるポジションがなくて。外国人選手で一塁が決まってしまうと…。

 落合 外国人は右打ち、左打ち?

 金本 右打ちです。

 落合 なんで?なんでと言っちゃいけないけど。なんでファーストにこだわったの?

 金本 ポジションはこだわってなかったんですが…。

 落合 今は人材がいないから。メジャーに30チーム出来ちゃって。これという選手は韓国にも行くから。持って行かれるんだ。

 金本 そうですね。

 ――ともにコーチ経験がないまま監督就任。迷いや不安はなかったか

 落合 オレの場合はない。要は、人材をどうやって集めてくるかだから。自分の手足となって動いてくれる、一緒に働いてくれる、自分の野球を理解して“監督はこういう野球をやる。じゃあ我々もそれに従ってやりましょう”っていう人を。だから03年秋、04年春秋のキャンプは、俺はコーチ連中を寝かせていない。毎日、“このチームをどうすんだ”というのを朝までやっていた。そのチームの屋台骨を作り上げないといけないという首脳陣だけとね。彼らとは本当に毎日朝3時〜4時まで。一番きつかったんじゃないかな、野球人生の中で。さっき金本が言ったけども、体質というのがある。中日は練習しなかったわけだから。それは阪神も一緒だと思う。当時、“練習するなあ”と思っていたのは昔の広島と、王さんが監督だった時のダイエー。やらなきゃ勝てない、だったらやらせばいいんじゃないの。やらないんだったら辞めてもらえばという単純な発想しかない。

 金本 まあ、僕の場合は“やりたくないなあ”と。逃げていましたから。僕はその時は“監督業には興味はあります”と。でも、今じゃないし、ここ(阪神)じゃないというのがあって…。先ほどから言っている体質です。タイガースの悪しき伝統…。現役の時は正直“僕がしっかりすれば”というのがあった。走塁とか全力でやって、執念を見せて勝つというのが自然にできたと思うんですよね。矢野とか下柳とか、そういう連中もいたから。でもいなくなると、元通り昔の雰囲気になってしまう。この雰囲気を覆すのは、相当のこと。野村克也さんがやってもダメだった。星野仙一さんの“コラーッ!”というので何とか変わったというのがあったんで。僕では無理ですと。

 落合 オレはやれると思うよ。

 金本 頑張っています(笑)。ところでさっき、落合さんが昔の広島って言われましたけど、今のタイガースは、特に秋のキャンプは昔のカープの1・5倍やっていますから。僕が経験した以上に。僕は選手に言うんですよ。“お前ら自信持てよ”と。“広島の練習がすごいと言っているけど、オレがやっていた広島の練習より今の方がよっぽどキツいからな”とね。そしたら選手はジロッと見るんですよ。“自分がやってきた以上のことをやらせているんか”と(笑)。ニヤッとしながらね。

 ――落合竜を参考にした部分も

 金本 相手の内部のことはわからないですけど。僕が思ったのはタイガースの選手は練習する環境にない。やっているとはみんな言うんですよ、口で。やっています、頑張ります、命懸けてやります…。でも実際やっている選手は10%ぐらいですよ。僕が20数年間、プロ野球を見てきて。落合さんは自分でやった方(かた)だと思う。僕もどっちかと言えば、入団からの2年間、2軍にいたんで。1軍のキャンプで特打したことがないんですよ。

 落合 やらせてくれないんだろ?

 金本 はい。呼ばれなかったんです。当時は江藤、前田、町田、浅井、緒方…らが特打に呼ばれて、僕は呼ばれなかった。休日練習も0回なんです、実を言いますと。だから、悔しいですよね。自分でやるしかない。落合さんも同じ…かどうかわからないですけど、自分でやられたんだろうなというのはあって。

 落合 今は選手みんな平等に、という考えがあるでしょう。1軍にいたってビジターでフリー打撃がないっていう日は、しょっちゅうだよ、当時は。リー兄弟、有藤さん、弘田さん、得津さん、張本さん…。(※2)大体ビジタ―だと1人5分ぐらい。彼らは状態が悪いからって1人で15分とか20分打っちゃうんだ。それが許される時代だったんだ。要は仕事するのは彼らなんだ。最後の方に打つ人間は今は上がって来て自分の打つ準備をするけど、当時はずーっと外野で守っているんだから。順番が来るまで。それがゲームに行かない人の試合前の過ごし方。今も、そこに戻った方がいいんじゃないかと思う時がある。そうしたら、自分で何かの合間を見て練習するようになるんだと思う。平等なんてあり得ない時代だったから。そういう世界なんだ、本当は。

 ――落合氏から見て、阪神の面白い選手は

 落合 みんな、面白いじゃない。(金本監督は)全員に期待していると思う。その中で競争して、誰が出てきてレギュラーを勝ち取るか、ということじゃないかな。

 金本 今の選手は不思議で。僕はプロに入って、プロのスピードはもちろんそう(難敵)ですけど、変化球に苦労しました。落合さんはどっちですか?一番最初。真っすぐと変化球のどっちに苦労しましたか?

 落合 苦労するのは変化球だよ。

 金本 そうですよね。(今は)速い球に弱いんですよ。ウチの選手は全員です。

 (※2)落合氏がプロ2年目だった80年のロッテの上位打線は(1)弘田澄男(2)張本勲(3)リー(4)レオン(5)有藤道世。落合氏は7月から1軍に昇格し打順は6、7番が多かった。

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