間一髪のプレーに見た城島の“凄み”

[ 2010年3月10日 06:00 ]

<阪神・日本ハム>6回1死三塁、糸井を好ブロックした城島は一塁へ送球するもセーフ

 【阪神3-4日本ハム】一塁塁審の谷審判員は思わず「セーフ!」と叫んでいた。6回表1死三塁。日本ハム・中田の遊ゴロで三塁走者糸井が本塁憤死。阪神・鳥谷の送球を受けた城島はタッチの後すぐさま一塁転送した。打者走者中田の一塁はまさに間一髪だった。

 「だから声が出た」と谷審判員は言う。「余裕でセーフなら両手を広げるだけ。あれは声の出るセーフだった」

 城島の動きを再現してみる。鳥谷好返球で本塁の三塁寄りで糸井にタッチ。その瞬間には一塁に駆ける中田の位置を見ていた。刺せると踏んだ。逆回転(右回り)に体を反転させ、やや横手から素早い送球を送った。

 審判歴35年目のベテランも「驚いた」と正直に言う。「タグ(タッチ)の後だからね。普通は一塁を見やっても投げてはこない。あの体勢から素早く、強く、正確な球だった。あれは本当に凄かった」。立場を超えて半ば感動していた。

 もう一度書く。本塁はタッチプレーである。もし併殺ならスコアブックには満塁封殺の「6―2―3」でなく「6―2t―3」とタッチアウトを意味する「t」が要る。ほとんど、お目にかかれぬプレーである。

 元慶大監督の前田祐吉氏が「野球と私」(青蛙房)でビッグプレーが生まれる土壌を「瞬間的なひらめきをやってみる柔軟な発想と失敗を恐れぬ大胆さ」と書いている。サヨナラ負けの右犠飛と思われた飛球で強肩の遊撃手が二塁手を押しやって中継に入り、本塁で刺殺した例を引く。セオリーや指示に縛られている選手には常識破りの感動は生み出せない。

 送球の技術の高さはもちろん、「感性野球」と評される城島の凄みに震えた「セーフ!」だった。

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2010年3月10日のニュース