日本球界猛反発も 田沢、メジャー契約へ

[ 2008年9月12日 06:00 ]

メジャー挑戦会見を終え、緊張した表情で会見場をあとにする田沢

 アマNo・1右腕の新日本石油ENEOS・田沢純一投手(22)が11日、都内で米大リーグ挑戦を表明した。今夏都市対抗を制した156キロ腕にはメジャー5球団以上が獲得に興味を示している。異例ともいえるメジャー契約を提示する準備があるレッドソックス入りが濃厚だが、トップアマ選手が日本のプロ野球を経ずにメジャー契約を結べば史上初のこと。一方、金の卵の流出には日本球団側も猛反発。10・30のドラフトでは強行指名を示唆する球団も出てきた。

 無数のフラッシュがたかれた。緊張した面持ちで会見場に姿を現した田沢は、真っすぐ前を見据えて力強く言い放った。
 「アメリカの方で挑戦したい気持ちが強いのでここで発表します。メジャーの印象?世界で一番強いリーグだと思う」
 ドラフト1巡目候補が表明した大リーグ挑戦の道。156キロ右腕が、前例のない夢への第一歩を踏み出した。
 今夏都市対抗で全5試合に登板して4勝0敗。MVPにあたる橋戸賞を獲得した右腕が、自らの進路を海の向こうに決めたのは8月中旬だった。「都市対抗が始まる前に監督たちと話をして決めました」。国内では地元・横浜をはじめオリックス、日本ハムが上位指名を検討。全球団がリストアップする逸材は、この日の午前中に全12球団の球団社長あてに指名回避の要望書をFAXで送信。自ら退路を断った。
 大久保監督によれば「あいさつに来ているのは5球団以上」。レッドソックス、マリナーズ、ブレーブス、カブス、メッツとみられるが、中でも昨季世界一軍団のレッドソックスは早くから田沢に注目。日本のプロに属したことのないアマチュア選手に対しては異例の“メジャー契約”を用意。さらに契約金などについても、日本のドラフト1巡目候補並みの条件をそろえているとも言われている。田沢は「希望球団はない」と話したが、条件の一つとして「高く評価をしてくれるところ」と考えていることから、破格ともいえる“メジャー契約”であれば、交渉はすんなりまとまりそうだ。日本野球連盟が定めた交渉解禁日は、日本選手権関東予選終了翌日の10月11日。最終的な契約は日本選手権(11月13日から11日間)終了後となるが、早ければ年内にも「レ軍・田沢」が誕生する可能性が高い。
 とはいえ、この日都内で行われた緊急12球団代表者会議では、メジャー球団による“紳士協定”破りについて紛糾。指名回避の要望書は出したが、田沢がドラフト対象選手であることも確認された。ただ、大久保監督は10・30のドラフトで田沢が指名された場合、国内球団と交渉せず、交渉期限が切れるのを待つ意向を示した上で「いろいろな圧力でご破算になることは避けたい。田沢は純粋な気持ちでいる。非難の声は僕が浴びればいい」と話した。
 「厳しい戦いになることは分かっている」と田沢。会場を後にするまで背筋を伸ばし、笑顔さえ見せなかったその姿勢が固い決意を物語っていた。

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2008年9月12日のニュース