初球で決めた!イチロー3000安打

[ 2008年7月31日 06:00 ]

<レンジャース・マリナーズ>初回表先頭、中前打を放ち三千本安打を達成したイチロー

 【マリナーズ10―11レンジャーズ】マリナーズのイチロー外野手(34)が29日(日本時間30日)、アーリントンでのレンジャーズ戦で日米通算3000安打の金字塔を打ち立てた。日本のプロ野球選手では張本勲氏に続く2人目の快挙となった。大リーグではすでに27人が到達した領域に足を踏み入れた天才は、同氏の持つ3085安打の日本記録、そしてピート・ローズの4256安打の大リーグ記録を目指していく。

 初球ホームランを狙っていた。「絵的にも一番、それがサマになるだろうと思っていたので」。先発メンドーサが投じた147キロの外角直球。しかし、インパクトの瞬間に体が違う反応をしてしまった。打球は遊撃手の頭を越え、左前にポトリと落ちた。「(本塁打を)狙いにいっても詰まると感じると、体がああいう動きになる」。日米通算3000安打はクリーンヒットではなかった。だが、イチローの技術を凝縮した一打でもあった。
 試合開始から、わずか10秒足らずの出来事。予期せぬ祝福が待っていた。電光掲示板に記録達成の文字が浮かび上がると、敵地ながら1万7168人の温かい拍手が降り注いだ。背番号51は戸惑いながら一塁ベース上でヘルメットを掲げた。
 塁上で、1つの言葉が去来した。「95年春に張本さんに“3000を打つのはおまえ。首位打者7回も、最終的にヒットの記録もおまえに抜いてもらいたい”と言われたんですよ。到達して、そのことを一番思い出しますね」。日本人として、同氏に続く2人目の大台。13年前の言葉が、おぼろげだった数字が、現実となった瞬間だった。
 34歳9カ月、2175試合での到達は、張本氏の記録より年齢で5歳2カ月、試合数で443も早く、大リーグの記録と比べても“球聖”と呼ばれたタイ・カッブ(元タイガース)に次ぐスピード記録だ。安打量産へ、日々のルーティンとして繰り返してきたのは意外にも「サク越えの量産」だった。
 試合前の打撃練習では、8割近くを右翼席に放り込む。「打者はしっかり引っ張れないと打撃はできない。練習で左打者が左方向に打っていたら、試合では絶対に打てない」が持論。試合でしっかりと引っ張れる体をつくる準備として、全力で右への本塁打を連発する必要があるという。「いきなり引っ張るのか、それともセンターの方に1回入れてから引っ張るのかで全然違う。僕は1回センターに入れて、バットに引っ掛けてから引っ張る」。最初から引っ張ると、体が開く原因になる。最初は焦点をセンターに絞り、グリップエンドで球を捕りにいく感覚で、引っ張り始めることが重要だと説く。
 6回には中前打して3001安打に伸ばしたが、本来なら「球宴前にやっておきたかった」数字だった。大リーグ8年目にしてかつてないほど苦しみ、打率は3割(・298)を下回っている。今季中にも、と思われていた張本氏の日本記録3085安打は来季へ持ち越しの公算が高く、8年連続200安打にも残り56試合で69安打が必要となる。1試合1・2本ペースは容易ではない。
 孤独な数字への挑戦はまだまだ続くが「いろいろな目標と戦えるのは、選手として喜びにしなければならない」とうなずいた。大リーグでも2人しかいない4000安打にも「物凄く遠くですけどね。でも、見えないことはない」。区切りの数字を通過した天才打者は、もう次の通過点に向けて走り始めていた。

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2008年7月31日のニュース