明大八王子に初の女子選手・三宅希空 元子役のJK球児の夢は男女二刀流で甲子園&イチローさんと対戦

[ 2024年5月17日 06:30 ]

「高校女子選抜」でイチロー氏との対戦を夢見る三宅(撮影・柳内 遼平)
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 この春、高校野球の西東京から「男女甲子園出場」の二兎(にと)を追う挑戦が始まった。明大八王子野球部に初の女子選手・三宅希空(のあ)内野手(1年)が入部。昨夏の西東京大会では4強の同部で男子と腕を磨き、高校に女子チームのない選手が参加する「連合丹波」の選手として8月に甲子園で開催される全国女子硬式野球選手権の決勝出場を目指す。入部から約1カ月がたち、その道のりに迫った。(柳内 遼平)

 東京都多摩地域の山中にある明大八王子は、青々とした森に囲まれている。椙原(すぎはら)貴文監督の下、初の甲子園出場を目指す「明八ナイン」に大きな変化があった。この春、同部初の女子選手が加わった。身長1メートル57で左投げ一塁手の三宅は「さあ、いこう!」と高く声を張り、走って、守って、ハッスルプレーでユニホームは泥だらけ。「声と体力は男子に負けないくらいある」と自負。壮大な夢へ、一歩目を踏み出した。

 物語の始まりは22年11月3日。当時中2だった三宅は、東京ドームで行われたイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が率いる草野球チームと、高校野球女子選抜の試合を観戦した。一塁側内野席でスマホの容量がなくなるまでイチロー氏の雄姿を撮影。「私もイチローさんと戦いたい」と胸をときめかせた。

 小3から中学まで、男子と一緒にプレーしてきた。中2で高校の進路を決める際には歴史を切り開いてきたイチロー氏のように、大きな夢を描いた。「将来のために視野を広げたい」と偏差値68の明大八王子で「文」を磨き、初の甲子園出場を狙う男子野球部で選手として「武」を磨くことを決意した。

 同部には女子選手が所属した前例はない。諦めずに林健司校長に同校でのプレーを希望する手紙を送ると、椙原監督と面談する機会を得た。明大野球部出身の指揮官は「野球部への優遇制度はないし勉強も大変」と甘くはなかった。「それでもやる気があるならば一緒に野球をしよう」と約束。模試では苦手な数学が100点満点で16点を取るなど入試への道は険しかったが、1日14時間の猛勉強の末、合格を勝ち取った。

 21年夏の西東京大会で8強、昨夏は4強と甲子園に迫る勢いの野球部。「男子ではチームとして、女子では選手として、2つの甲子園に行くことが私の目標です」。50メートル走7秒3の走力と、高いミート力が売り。レベルの高い環境で成長し、高校に女子チームのない選手たちで構成されて夏の全国女子硬式選手権大会に参加する「連合丹波」への選出を狙う。男子と異なり予選にあたる地方大会のない同大会は、決勝の1試合は夢舞台の甲子園で開催されている。

 夢は「男女二刀流で甲子園」にとどまらない。最終目標はイチロー氏と戦う高校女子選抜のメンバー入り。「バッターとしてイチローさんの球を打ってみたい」と東京ドームの打席に立つ日を夢見る15歳。「高校野球は凄いスピード感。この高いレベルの中で男子と一緒に頑張っていきたい」。帽子の後ろからポニーテールをなびかせ白球を追いかける。

 ≪「まんぷく」ヒロイン娘役≫三宅は幼少期から子役としても活動し、18年10月から19年3月まで放送されたNHK連続テレビ小説「まんぷく」ヒロイン福子の娘・幸役など、テレビ、映画、CMなどに出演してきた。中学時代から学業と野球に注力し、現在は俳優活動はしていない。それでもカメラの前での演技経験を通して「物おじしない性格が私の長所」と強みを磨いた。

 ≪明大女子硬式野球クラブ 活動3年目にスポンサー≫22年4月に明大女子硬式野球クラブが体育会の正式な部となることを目指し、活動を開始した。活動3年目の今季は新たに活動費のスポンサーを獲得し、試合用のユニホームは「のむシリカ」、「お得電力」のロゴ入りに。チームを創設した藤崎匠生(しょう)監督は、夢とする女子による東京六大学野球リーグ創設に向け「何年かかっても成し遂げたい」と語った。

 ▽連合丹波 高校に女子チームのない選手が全国から集い参加する連合チーム。大会直前にチームを結成し、ベンチ入り25人を選出する。「全国高校連合丹波」として05年から選手権大会に出場。今春の選抜大会では1回戦で開志学園(新潟)に5―12で敗れた。チーム名の由来は、選手権大会会場の兵庫県丹波市。夏の全国高校女子硬式野球選手権大会は97年に第1回大会が5校で開催され、21年から決勝のみ甲子園で行い、23年は58チームが参加した。春の全国高校女子硬式野球選抜大会は22年から決勝を東京ドームで開催している。

 ◇三宅 希空(みやけ・のあ)2009年(平21)3月20日生まれ、埼玉県上尾市出身の15歳。大石小3年時に小泉ジュニアーズで野球を始め、大石中では軟式野球部と硬式のTBAヤングに所属。憧れの選手は阪神・近本。遠投65メートル。特技は「クレヨンしんちゃん」野原しんのすけのモノマネ。趣味は「MISIA、中島みゆきの歌を歌うこと」。1メートル57。左投げ左打ち。

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