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ホンダの新型「WR-V」が万人受けするのは開発スタッフの男女比1:1だから!新しい世代の感性が生んだニューモデルの実力はいかに?

[ 2024年4月17日 15:00 ]

今までにないSUVらしいスタイリング

車両価格235万円以下、オプション装着状態でも270万円を切る。

インドで先行販売されていたホンダのグローバルSUVモデル「WRーV」の国内販売が始まった。2023年12月の発表時から、最上級グレードでも250万円を切る価格設定が注目を集めていたが、一方でこれまでのホンダらしからぬSUVらしい堂々とした「ゴツい」スタイリングも評価されていた。

ホンダの国内向けSUVラインナップとしては、1.5Lクラスの「ヴェゼル」と2.0Lクラスの「ZR-V」(いずれもハイブリッドのエンジン排気量)が存在しているが、どちらもクーペSUV的でスラっとしたフォルムとなっている。しかし新型モデル「WR-V」はオーソドックスなSUV的印象のスクエア系スタイルとなっている。

ストレートタイプのシフトゲート、手引きのパーキングブレーキなどオーソドックスなコックピット。9インチナビはディーラーオプション。

価格帯とは関係なく、WR-Vのスタイリングに惚れ込んで購入を決断するオーナーも少なくなさそうだ。さすがに1995年に誕生した初代CR-Vに乗りつづけているというホンダファンは少数派だろうが、新しいWR-Vのスタイリングには初代CR-Vの正統的後継モデルという印象も受ける。

ワイルドでタフを感じさせるスタイリングの印象とは裏腹に、WR-Vのメカニズムはシンプルでオーソドックスだ。アフォーダブルな価格を実現するために、パワートレインは1.5L 4気筒DOHC”i-VTEC”エンジンにトルクコンバーター付CVTを組み合わせたもの1種類で、駆動方式もFFのみとなっている。つまり、走りとしては都市型SUVとして評価すべきモデルといえる。

車名の由来は、WR-V =Winsome Runabout Vehicle (ウィンサム ランナバウト ビークル)というもの。Winsomeには「楽しさ」・「快活さ」という意味がある。

コーナリング性能に不満なし、後席快適性も高い

後席ドアが大きく、乗降性は上々。価格帯から想像できないほどリヤシートも立派だ。

公道初試乗のスタート地点となったのは、東京・青山にあるホンダの地下駐車場。まさしく都市型SUVらしいシチュエーションで、都内の一般道や首都高をグルグルと走りながら、その乗り味を確認することにした。

意外だったのは、首都高での振る舞いだ。

最低地上高195mmを確保したSUVらしいスタイリングだけに、さほどコーナリング性能へ期待はしていなかったが、試乗したZグレードは55偏平17インチのツーリング系タイヤを履いていることもあって、首都高ではロールを抑え、ビタッと路面を捉えた走りが味わえる。

ハードウェアの素性としてはアジア向けコンパクトモデルのプラットフォームを利用したSUVといえるのだが、ホイールベースが長めというプロポーションも相まってか、まるでCセグSUVのようなしっかりとしたハンドリングが楽しめるのだ。

Zグレードにアルミホイールは標準装備。試乗車のタイヤ銘柄はブリヂストン「TURANZA T005A」だった。

その上で、着座位置の関係から視界は広く、ボンネット形状の工夫により車両感覚もつかみやすいため、市街地の狭い道での取り回しも良好。アーバンSUVとしての満足度は高い。

これまた期待以上だったのは、後席の乗り心地だ。

最上級グレードでも250万円以下のSUVモデルとなれば、後席の快適性は多少なりとも犠牲になっていると想像してしまうが、WR-Vのリヤシートはクッション性もよく、フロアの剛性感も高い。路面からの突き上げがあっても、ダンパーが的確にストロークを制御してくれる。ノイズの侵入も最小限で、ひとクラス上のCセグのような乗り心地が味わえた。

LEDヘッドライトを全グレードに標準装備。LEDフォグランプはZ以上のグレードに標準となる。

これほどの良作が生まれたのはタイにあるHonda R&D Asia Pacific(HRAP)で開発されたことも大きいだろう。聞けば、HRAPの開発スタッフは若い人が多く、男女比もほぼ1:1なのだという。しかも元気な女性が開発現場をリードしているという。

そうした新しい世代の感性が、見切りのよさと押し出しを両立したスタイリングや、期待値を大きく超えるハンドリングや快適性を実現しているとなれば、これから生まれるホンダ車への期待も高まってくるというものだ。

ハイブリッドの設定はないが街乗り燃費は満足できる

可変バルブタイミング機構「i-VTEC」を備えたDOHCエンジンにパドル付きCVTを組み合わせる。

コストパフォーマンスといえば、無視できないのがランニングコストにおける経済性だろう。

前述したようにWR-Vのパワートレインは、1.5Lガソリンエンジンだけとなっており、ハイブリッドの設定はない。試乗グレードのWLTCモード燃費は16.2km/L、市街地モード12.3km/L、郊外モード17.2km/L、高速道路モード18.0km/Lとなっている。

はたして、都内の一般道と首都高において日常レベルの渋滞にハマりつつ走ったときの燃費は、高速道路モードを超える18.4~18.5km/Lというものだった。これは撮影を終えてから純粋な移動区間で計測した数値で、エンジンが暖まっている状態だったので燃費に有利という面はあるが、標準装備されるパドルシフトをカチャカチャと楽しむなどしていたので、エコドライブをしたというわけではない。それで、このくらいの燃費が実現できるのであれば経済性の面でも文句ない。

流れに乗って走っている範囲であれば、エンジン回転数は発進時でも3000rpm以下であるし、巡行しているときは2000rpm前後といったもの。そのためパワートレイン由来のノイズや振動も少ない。このあたり、200万円台のモデルではいまや貴重な4気筒エンジンを積んでいることもメリットになっていると感じた。

運転席は高さ調整が可能なタイプ。Z以上のグレードには本革ステアリングが標準装備される。

タフなスタイリングのSUVとしては4WDの設定がないのは残念な部分ともいえるが、都市型SUVとして考えれば、スタイリングの押し出しもあり、後席快適性も高く、燃費も十分という、非常にバランスのよいモデルに仕上がっているといえそうだ。

試乗したZグレードの車両価格は234万9600円、9インチナビなどディーラーオプションを装着した状態でも268万8400円という価格からすると満足度は高く、本当の意味でコストパフォーマンスのよいニューモデルと実感できた。

Honda WR-V Z(ボディカラーはプラチナホワイト・パール 3万8500円高)

画像ギャラリー&スペック


「ホンダの新型「WR-V」が万人受けするのは開発スタッフの男女比1:1だから!新しい世代の感性が生んだニューモデルの実力はいかに?」の1枚めの画像

WR-V 「Z」
全長×全幅×全高:4325mm×1790mm×1650mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1230kg
排気量:1496cc
エンジン:直列4気筒DOHC
最高出力:118PS(87kW)/6600rpm
最大トルク:142Nm/4300rpm
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT(トルクコンバーター付)
WLTCモード燃費:16.2km/L
最小回転半径:5.2m
タイヤサイズ:215/55R17
乗車定員:5名
メーカー希望小売価格:234万9600円

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