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上谷沙弥は「しょっぱい」プロレスラーなのか?

[ 2025年8月25日 12:00 ]

8月23日の大田区総合体育館での試合後、メディアに向けて発言する上谷沙弥
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 【牧 元一の孤人焦点】プロレスラーの発言は非常に重要だ。それをテーマに次の試合を盛り上げることができるからだ。

 女子プロレス団体「スターダム」の真夏の祭典「5★STAR GP」浜松大会(8月18日)で上谷沙弥を破ったビー・プレストリーはリング上で「上谷が一番しょっぱい」と言い放った。

 「しょっぱい」とは「低調」を意味するプロレス・格闘技用語。観客を沸かせることが大切なプロレスラーにとって、そのように酷評されることは「弱い」と指摘されるより屈辱的なはずだ。

 団体最高峰の赤いベルトを所持する上谷がしょっぱくて良いはずがない。ビーとの防衛戦(9月6日、横浜武道館)で、そうではないことを証明する必要に迫られた。

 実際、スターダムの王者に上り詰めた上谷は決してしょっぱくない。ビーにしても、それを分かった上でプロレスラーの務めとして挑発したはずだ。現在の上谷の試合には、独自のプロレス論を具現化しようとする真摯な姿勢が見て取れる。過去の当欄インタビューでの発言を拾ってみると──。

 「リングでは、身体のシルエット、後ろ姿、手先、頭の先まで意識している。試合では相手の選手と戦っているが、一番の相手はお客さん」

 「心を揺さぶるプロレスがしたい。そのために、自分の生きざまをプロレスに乗せる。自分が今まで経験してきたことを乗せなければ、お客さんは応援したい気持ちにならないと思う」

 「プロレスとは人生そのもの。生きていれば上がる時もあれば下がる時もある。プロレスも、勝つ時もあれば負ける時もある。負けて落ち込んでも、また頑張ろうと自分を奮い立たせる。やられてもやられても立ち上がる。その姿がプロレスの一番の魅力だと思う」

 「チャンピオンは大きな器じゃなくちゃいけない。相手の技を受け止めるだけじゃなく、相手の、プロレスラーとしての生きざまや試合にかける思いを全て受け止め、相手の良さを全て引き出した上で勝たなくちゃいけない」

 「選手は十人十色で、みんな個性が強い。その一人一人と試合で会話していく。試合でコミュニケーションを取っていく。精神的に削られることではあるが、対戦相手としっかり向き合っていく」

 それらを体現すれば、しょっぱくなるわけがないのだ。

 「5★STAR GP」優勝決定戦が行われた大会(8月23日、大田区総合体育館)では、6人タッグマッチでビーと対戦。試合後に「ビー、調子に乗ってんじゃねえぞ。スターダムの『3大しょっぱい』は月山和香、レディ・C、向後桃。沙弥様は全然しょっぱくねえんだよ」とヒールレスラーらしく悪態をついた上で「横浜武道館まであと2週間。沙弥様がいま乗りに乗っていることをおまえに分からせてやるからな」と対決姿勢を鮮明にした。

 翌24日の防衛戦調印式では、ビーが約4年間スターダムを離れて活動していたことを指摘し、「この4年、沙弥様はずっとスターダムでもがき続け、いまトップにいる。スターダムの厳しさを教えてやる」と挑発し返した。

 2人の発言の応酬で舞台は整った。果たして上谷沙弥はしょっぱいか否か?プロレス界を担っていける人材なのか?なかなか興味深いテーマだ。その答えが間もなく出る。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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