井岡一翔と大みそか統一戦のフランコ単独インタビュー 井岡の印象は?弱点は?
WBO&WBA世界スーパーフライ級王座統一戦12回戦 ( 2022年12月31日 東京・大田区総合体育館 )
大みそかにWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(33=志成、29勝15KO2敗)と王座統一戦に臨むWBA同級王者ジョシュア・フランコ(27=米国、18勝8KO1敗2分け1無効試合)が単独インタビューに応じた。リングに上がるのは初防衛に成功した21年8月のアンドリュー・モロニー(オーストラリア)戦以来、1年4カ月ぶり。フランコは24日夕に来日する。(取材・杉浦大介通信員)
――井岡戦に臨む心境は。
「長い間、この試合のために備えてきました。多くのスパーリングと上質なトレーニングを積んで準備してきたので、本当に楽しみにしていますよ。井岡のような王者と統一戦ができることにエキサイトしていますし、日本を訪れるのも楽しみです」
――井岡の印象は。
「総合力に優れた選手ですね。スキル、ボクシングIQに恵まれています。4階級を制した選手なのだから、私も最高の準備が必要になります。井岡のことは最大限にリスペクトしていますが、彼は私のようなボクサーと対戦したことはないはず。彼が見たことがないもの、あるいは長い間見たことがないものを見せられると思っています」
――井岡の戦力を見て、具体的にどこが印象的か。
「彼の経験とジャブ、そして辛抱強さです」
――弱点はあると思うか。
「詳しくは話せません(笑い)。ただ、あえて挙げるなら、簡単に後ろに下がるところですね」
――自身も多才なボクサーだが、自信を持っているのはどういった部分か。井岡が見たことがないものとはどういう点か。
「私自身も優れたボクシングIQを持ち、辛抱強いボクサーだと自認しています。その点が井岡との試合中も生きてくるでしょう」
――この試合はいつ頃から具体化していたのか。
「3、4カ月前から統一戦ができそうだという話は聞いていました。ただ、確定ではなく、交渉の段階から少しずつ前に進み、決定したという流れです」
――これまでのキャリアで印象に残っている試合は。
「世界タイトルを取った(20年6月の)アンドリュー・モロニーとの試合がこれまででベストの勝利です。ただ、キャリアの中で行った全ての試合が重要だったと思っています。それらの戦いがボクサーとしての私を形づくり、こうして井岡戦にたどり着いたわけですから。いいタイミングで統一戦に到達できたと考えています」
――井岡戦はどのような戦い方を心がけるつもりか。
「これも詳細は明かせませんが、自分らしく戦いますよ。井岡がどんなスタイルで来ようと、スパーリングでもやってきた通り、アジャストしてみせます。私はアウトボクシングができるし、前に出ても戦えます。リング中央での打ち合いも構いません。ジャブ、辛抱強さ、IQを駆使し、今回の戦いにも適応するつもりです」
――敵地である日本で戦うことに懸念は。
「敵地での試合ですから、分かりやすい勝ち方をしなければいけません。支配的に勝つために、多くのコンビネーションパンチを出すつもり。見ている人たちが楽しめる試合になるでしょう」
――KOは意識するのか。
「井岡にダメージを与えるつもりです。彼が効いたのがわかったら、ストップを狙いますよ。私は敵地で戦うのだから、そういった気持ちが必要です」
――前の試合からかなり間隔が空いていることは懸念材料になるか。
「その点は心配していません。前戦以降、常にジムで時間を過ごしてきました。多くのスパーリングを積み、練習を継続してきました。スパーリングの量も豊富にこなしてきましたし、井岡戦もこれまで通りに戦えるでしょう」
――2020年6月~2021年8月にモロニーと3連戦を行った。同じ相手と3連戦は珍しいが、このトリロジーで学んだことは。
「12ラウンドをしっかり戦い抜けることを証明できたのは大きかったです。貴重な経験を積ませてもらい、よりいいボクサーになれたと思っています」
――幼少期に好きだったボクサーは。
「フェルナンド・バルガス、マイク・タイソン、オスカー・デラホーヤです。特にバルガスとタイソンが好きでした。彼らは本当にエキサイティングなボクサーだったですからね。あとはリカルド・マヨルガも好きでした。彼の無鉄砲なスタイルは見ていても楽しかったですよね」
――現役ボクサーで見るのが好きな選手は。
「私の弟(前WBC世界スーパーフライ級王者のジェシー・ロドリゲス)以外で、ですよね?(笑い)。ワシル・ロマチェンコ、ジャーボンテ・デービス、エロール・スペンスJr、テレンス・クロフォードですかね。あとはサウル・“カネロ”・アルバレスも好きです」
――“チョコラティート”ことローマン・ゴンサレスとの対戦を希望しているとも聞いたが、その気持ちに変わりはないか。
「そのとおりです。だからフアンフランシスコ・エストラーダには勝ってほしいですね。私はエストラーダとの第2戦もチョコラティートが勝っていたと思っています。彼がエストラーダに勝ったら、次は私が彼と対戦したいんです。いずれにしても、井岡戦のあと、エストラーダ対チョコラティートの勝者と対戦したいというのが私の希望です。もちろん井岡は凄い選手なので、今は井岡戦だけに集中していますが」
(注 このインタビューは12月3日のエストラーダ対ゴンサレス戦の前に米アリゾナ州で収録)
――スーパーフライ級への転級を公言した(前WBO世界フライ級王者)中谷潤人の印象は。
「中谷も素晴らしい選手ですね。スキルフルなボクサーです。今ではスーパーフライ級に多くの著名選手が揃っているので、彼は良いタイミングで上がってくるのでしょう。これから複数の好カードが実現するはずで、中谷もまたビッグファイトを戦う1人になっていくはずです」
――入れ替わりで弟のジェシー・ロドリゲスはスーパーフライ級王座を返上し、フライ級に下がる方向。高く評価されるようになった弟との関係は。
「ジェシーは私のベストフレンドです。いつも一緒に時間を過ごしてきた最高の友人。彼の方が年下ですが、双子みたいな感じですね」
――絶対にあり得ないことはわかっているが、兄弟対決を考えたことは。
「ノー!絶対にないです(笑い)。一緒に練習しているので、スパーリングをすることはあります。しっかり練習に徹すればいいんですが、熱くなりすぎてしまうことがよくあるんです。だから父親は私たちがスパーリングするのが好きではありません(笑い)」
――かつて日本で日本王座をめぐって兄弟対決が行われた(93年の江口九州男と勝昭による日本ミニマム級王座決定戦)のを知っているか。
「本当ですか?!それは知りませんでした。気まずかったでしょうね(笑い)」
――井岡戦で来日する際、試合以外に楽しみにしていることは。
「まずは体重調整に気を配らなければいけませんが、チャンスがあったら街の中を少し見て回りたいですね。日本に行けることに本当にエキサイトしているんです。ただ、何よりも大事なのはやはり今回の試合です」
――ボクサーとしての最終目標は。
「偉大なボクサーとしてファンに記憶されることです。どんな強豪からも逃げなかった選手として認識されたいです。統一王者、複数階級王者にもなりたいですが、それよりもとにかく常にいい試合をする偉大な選手として認めてもらえたら嬉しいですね。その上で、お金も稼げるようになれば最高です(笑い)」
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