ダブル世界戦の主催者発表は3500人…内山不在が観客数に影響
控え室にはホッとした雰囲気が流れていた。8月31日に行われたダブル世界戦(大田区総合体育館)のメインでWBA世界ライトフライ級王者・田口良一(ワタナベ)が4度目の防衛に成功。セミファイナルではWBA世界スーパーフライ級王者・河野公平が敗れており、田口まで負けるとワタナベジムの世界王者は一時の3人からゼロとなるところだったからだ。
質疑応答が一通り終了したところで、本日の観客数は何人かとの質問が記者から出た。興行を主催するワタナベジムの渡辺均会長は周囲に聞くわけでもなく、ちょっと考えただけで答えた。
「3500人で」
これに異を唱えたのが田口だった。
「え、もっと少ないですよ。自分が入ってきた時、けっこう席空いてましたから」
「じゃあ3000ぐらい?」
「2800じゃないですか」
そこへ日本ボクシングコミッション(JBC)の職員がやってきて、
「観衆は3500人でいいんですか?」
「3500で」
いや、適当すぎるだろ。
渡辺会長によると、大田区総合体育館での興行は定員が4300人。今回は前売りも含めて席が7割方埋まったとみて3500人(そもそも、その計算だと3000人)にしたのだという。主催者発表なら多少水増しをしても別に問題ない(実はある。後述)し、プロレスやコンサート、抗議デモの人数だって大多数が「主催者発表」(警察発表とかなり差が出る例もある)だ。プロ野球も実数発表が始まって10年ちょっとで、以前は球場がガラガラなのにありえない人数が発表されることもザラだった。
実数にすると悲惨な数字が出てしまうケースもある。8月26日に今季が開幕したラグビートップリーグのメディアガイドには「最多観客動員数」ベスト10のほか、ご丁寧に「最少観客動員数」10傑も記載されている。それによると、ワースト1位は05年12月4日、熊谷ラグビー場でのリコー対セコムの252人で、2位は同年12月25日、同会場でのセコム対福岡サニックスの314人。熊谷ラグビー場はアクセスが悪い(ちなみに19年ラグビーW杯日本大会の会場です)上に、赤城おろし吹きすさぶ時期でこのカードなら仕方がない。学生ラグビー全盛期には、消防法に抵触するような観客数が発表されたこともあったのだが…。
話をボクシングに戻すと、同じ大田区総合体育館で行われたワタナベジムの興行でも、WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者だった内山高志が出場した昨年の大みそかは4300人、今年4月27日は3830人の発表。今回は地元・大田区出身の田口が応援団600人を動員するなど奮闘したが、やはり内山不在の影響が観客数にも出た形だ。ちなみに水増し発表だと、あとで税務署から追及されることがあるとか。その場合はタダ券をバラまいたとか割引したとか、理由づけするのだという。(中出 健太郎)
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