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政界で第2ラウンド 元イケメン系ボクサーの信念「公平な世の中を」

[ 2015年8月15日 13:15 ]

ボクシング元世界王者の福井県議会議員、清水智信氏(左)と日本プロボクシング協会の大橋秀行会長

 政治の世界でも、彼の軽快なフットワークは健在だった。かつて「スピードスター」の愛称で活躍し、ジャニーズ系イケメンボクサーとしても人気のあった元世界王者の清水智信氏は今年4月の地元福井県議会選でトップで初当選。今月上旬にはさっそく上京して、日本プロボクシング協会の大橋秀行会長を訪問し、久々にボクシング関係者に元気な姿を見せた。

 訪問の目的はボクサーのセカンドキャリア支援の提案だった。「地方は人口が減少し、福井は農業や漁業の一次産業の担い手が不足している」。福井県は現在、人手不足解消のため、就農希望者への補助金を充実させるなどさまざまな支援態勢を整えている。意欲ある人は福井県出身者以外も歓迎だ。では、どんな人に来てもらいたいか。清水さんが目をつけたのがかつての仲間たちだった。

 ボクサーが引退後、ジム経営できるのは世界王者クラスのごく一部に過ぎない。それも近年は供給過多で経営もラクではない。「元日本王者で引退後、居酒屋でバイトしている方もいるし、サラリーマンとして一般社会に溶け込むのに苦労している方も多い」。多くのボクサーは引退後も厳しい戦いが待っている。そんな現実を知っている清水さんは「農業も漁業も体力が必要で厳しい仕事だけれど、TPPもあってアイディア次第ではチャンスもある。ガッツのあるボクサーには向いていると思う。次の人生、福井に来て農業や漁業で活躍してほしい」と訴える。これには大橋会長も「ボクサーのセカンドキャリアは大事な問題。気にかけてくれてうれしい」と喜び、協力を約束した。

 そもそも清水さんが政治家を志すきっかけは不遇の王者時代にあった。11年に3度目の世界挑戦でWBA世界スーパーフライ級王者となったが、わずか3カ月でケガを理由に休養王者に“格下げ”された。代わりに正規王者になったのはテーパリット・ゴーキャットジムで、その後に亀田大毅とタイトルマッチを実施。試合の承認料収入を増やしたいWBAや早くタイトルマッチに実現したい有力選手の思惑が絡んだ周囲の事情に振り回された。「どの世界もお金や政治力を持つものが強い。ボクシングは特にそうだった。自分は理不尽な経験をしたけれど、世の中は公平じゃないといけない。弱い者を救いたいと思うようになった」。強くて、優しいイケメン議員。清水さんのセカンドキャリアも充実したものになることを願っている。 (柳田 博)

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2015年8月15日のニュース