大毅 我慢の作戦勝ち 本能の“暴走”抑えた「奇跡ですよ」
プロボクシング IBF世界スーパーフライ級王座決定戦12回戦 亀田大毅 判定 ロドリゴ・ゲレロ
(9月3日 高松・マリンメッセ香川)
IBF世界スーパーフライ級王座決定戦が3日、高松市のサンメッセ香川で行われ、同級3位で亀田3兄弟の次男・大毅(24=亀田)が同4位のロドリゴ・ゲレロ(25=メキシコ)を3―0判定で下して空位の王座を獲得しWBA世界バンタム級王者の長男・興毅(26)、WBO世界同級王者の三男・和毅(22)とともに史上初の3兄弟同時世界王者となった。4月に日本ボクシングコミッション(JBC)がIBFに加盟して初の国内開催のIBF世界戦でベルトを獲得し、大毅はWBA世界フライ級王座に続く2階級制覇を達成した。
「新チャンピオン」のアナウンスを聞くと、大毅の目から光るものがあふれた。ダウンを奪うことはできなかったが、3―0の大差の判定勝ち。夢の3兄弟同時世界王者を実現させると、早速リング上でギネス世界記録の認定式も行われ「うれしすぎるね。これで世界一の3兄弟になれた」と歓喜に浸った。
ファイターがアウトボクシングに徹した。「俺一人でボクシングをしているんじゃない。亀田家のために(同じ)失敗はできない」。11年12月、WBA世界スーパーフライ級王者テーパリット(タイ)に序盤から打ち合って終盤失速し、判定負けした。その反省を生かして、暴走しそうになる本能を抑えた。前に出てくるゲレロを巧みにかわして、ノーモーションの右ストレート、左フックを打ち込み、着実にポイントを稼いだ。積極的に打ち合ったのは10、11回だけ。5、11回に2度ローブローの反則で1点減点を取られたが、冷静さを失わずに足を動かし続けて「くっついても負けないけれど、アウトボクシングもできるんですよ」と胸を張った。
前回の世界挑戦で失敗し、チャンスから見放された。「世界前哨戦」と銘打って6試合も戦った。「1回世界王者になっているし、もう(現役は)いいかな」と思うことが何度もあった。世界挑戦が決まってからも苦しんだ。7月の猛暑の中での練習では疲労が蓄積し、吐血も経験。腰痛や左でん部などのケガも相次ぎ、大事な時期にスパーリングをこなせないこともあったが、何とかこの一戦に間に合わせた。
2階級制覇を達成し「俺が2本もベルトを巻けるなんて奇跡ですよ」と笑った。3兄弟の中で最も才能で劣ると言われてきた。興毅は日本人初の3階級制覇を達成し、和毅も初挑戦で世界王座獲得に成功したが、大毅は世界戦で3敗もしている。「いくつもの日々を越えてたどり着いた今がある」。試合後の恒例の熱唱ではゆずの「栄光の架橋」を選び、諦めずに戦い続けて栄光を手に入れた感慨にふけった。12月に予定する恒例の亀田祭りでは、3兄弟3大世界戦を行うことが可能だ。亀田家の夢がまた一つ形になった。
◆亀田 大毅(かめだ・だいき)1989年(昭64)1月6日、大阪市西成区生まれの24歳。06年2月プロデビュー。07年10月、WBC世界フライ級王者の内藤大助(宮田)に判定負けし、反則行為で1年間の出場停止。10年2月、3度目の世界挑戦でWBAフライ級王座獲得し、2度の防衛後に返上。11年12月、WBA世界スーパーフライ級王者テーパリット(タイ)に判定負け。身長1メートル67・5、リーチ1メートル64。右ファイター。
≪国内世界王者は最多11人≫亀田大毅の王座獲得で日本人王者はWBA世界フライ級暫定の江藤を含めて史上最多の11人となった。また興毅に次いで大毅も2階級制覇となり、マルケス兄弟(メキシコ)に次ぐ史上2組目の兄弟での複数階級制覇を達成。
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