龍神NIPPONは世界のトレンドとマッチ 「サーブ」「つなぎ」「一本へのこだわり」 30日W杯開幕

[ 2023年9月27日 05:20 ]

石川祐希
Photo By スポニチ

 【元代表・福沢達哉氏が解説】バレーボールのパリ五輪予選男子東京大会兼W杯は30日に東京・国立代々木競技場で開幕する。8チームが1回戦総当たり戦を行い、上位2チームに出場権が与えられる。今年のネーションズリーグで銅メダルを獲得するなど躍進を続ける龍神NIPPONはパリ行きの切符をつかめるか。元日本代表でパナソニックパンサーズ・アンバサダーの福沢達哉氏(37)がかつて一緒にプレーした石川祐希(27=ミラノ)ら主力を紹介し、戦いのポイントを解説する。

 バレーボールのトレンドはここ10年で変わった。2010年代半ばまではパワーが試合を左右した。サーブが強ければ勝てる。状況が悪いボールでも決め切る選手がいるチームが勝つ。パワーバレーの時代だった。日本はどう戦えばいいか苦しんでいた。今は難しい状況ではつないでリスタートできるスキルを持った選手が生き残る時代だ。

 例えば2メートル級の3枚ブロック相手に、1メートル90台前半の石川がブロックの上から打ったり、かわして打つのは至難の業。でも石川はブロックに当ててリバウンドを取り、リスタートしていい状況で打てる。

 石川はその状況判断にたけている。3枚ブロックが来たら指先を狙うのが常とう手段だが、そうするとレシーバーはワンタッチを警戒して下がる。そこでレシーバーが下がったらブロックの裏にボールを落とす。観察力と状況判断が凄い。

 高橋藍とは1年半一緒にプレーしたが、当初から守備が世界トップレベルだった。サーブレシーブが得意で、返すボールの質がいい。強豪にはビッグサーバーがいるが、今の日本は高橋藍、石川らのレシーブが安定していいボールが返る。だからセッター関田からの多彩な攻撃が生まれる。その意味でも高橋藍の存在は大きい。イタリアで経験を積んで、難しいトスでも決め切る力も付いた。

 西田は物おじしない性格で注目されるほど力を発揮する。ビッグプレーで状況を打破すると盛り上がるから1点に1点以上の価値がある。オポジットとしては身長が低いが、それを感じさせないぐらいフィジカルで勝負できる。

 ブラン監督はコーチ時代から7年、日本代表を指導している。新戦力が加わっているが、軸となるバレーボールは変わらない。日本の平均身長は1メートル95前後。海外の強豪は2メートルを超える。その5センチの差をどう埋めるかを試行錯誤してきた。

 武器となっているのはサーブだ。西田、高橋藍、石川、宮浦らは一本で状況を打破できる。ミドル、関田の戦術的サーブも効果的。レシーブを崩せばフィジカル勝負でなくなる。2段トスは相手も打ちづらいので日本のブロックでも止められる。

 そして鍵になるのがつなぎのプレー。パワーのあるスパイク、サーブが来る時に1本で決めようとすれば相手の思うツボ。相手は乱れたところを仕留めようとする。いかにラリーに持っていけるか。レシーブが乱れてもトスをスパイカーに持っていけるか。このつなぎの部分で日本は取りこぼしが少ない。

 これはブラン監督が大事にしてきたことで、選手も理解をして一本のトス、一本のレシーブ、一本のスパイクに対するこだわりはどの国よりも強い。

 五輪予選は徐々に強い相手と当たる組み合わせになった。ネーションズリーグではブラジルに勝って波に乗り10連勝した。積み重ねた自信があるからメダルが懸かった試合でも慌てなかった。五輪予選でも最初の4試合を自信のあるプレーで勝ち切りセルビア、スロベニア、米国との最後の3試合に臨みたい。(元日本代表)

 ◇福沢 達哉(ふくざわ・たつや)1986年(昭61)7月1日生まれ、京都府出身の37歳。洛南、中大を経てパナソニック入り。ブラジル、フランスでもプレー。中大1年時の05年日本代表に初選出。08年北京五輪出場。21年8月現役引退。

 ▽パリ五輪への道 出場枠は開催国フランスを含む12。五輪予選は世界ランク上位24カ国(フランスを除く)が参加し、8カ国ずつ3組に分かれて1回戦総当たり戦を行い、各組上位2カ国が出場権を獲得する。残る5枠は来年のネーションズリーグ1次リーグ終了時(6月24日)の世界ランクで決まる。優先されるのは五輪予選で出場枠を獲得できなかった大陸の最上位国。余った枠は出場権を得ていない上位国に与えられる。

 ▽パリ五輪予選展望 世界ランク5位の日本は格下相手の4試合を全勝で乗り切り強豪との終盤3試合に臨むことが切符獲得の必須条件。同9位セルビアは直前の欧州選手権で8強に入り準々決勝で同1位ポーランドに善戦した。同8位スロベニアは昨年の世界選手権で4強進出。今年の欧州選手権では3位に入った。ともにネーションズリーグの日本戦は敗れたが、2メートル以上の選手が多く高さがあり侮れない存在。最終戦で当たる同2位の米国はネーションズリーグ準優勝国。セッターのクリステンソンを中心に総合力が高い。(世界ランクは26日現在)

続きを表示

この記事のフォト

「羽生結弦」特集記事

「テニス」特集記事

2023年9月27日のニュース