石川佳純引退 “記者冥利に尽きる”いくつもの経験に感謝

[ 2023年5月2日 04:43 ]

石川佳純
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 【記者フリートーク 元卓球担当・杉本 亮輔】初めて石川とゆっくり言葉をかわしたのは、16年前だった。史上最年少13歳で4強に進撃した07年全日本選手権の後、インタビューする機会に恵まれた。ほこりをかぶった取材ノートに書かれていたのは、こちらの質問に対する中学2年生の的確な回答。そして、私が彼女に抱いた印象も記されていた。「プレーだけでなく、頭の回転も速い!」と。

 先に福原愛さんが活躍していたこともあって“愛ちゃん2世”と呼ばれた時期もあった。実績を積み重ねて自身のポジションを確立すると、次は伊藤美誠ら年下に追われる存在に。東京五輪を見据えた19年、当時26歳の石川はぽつりと言った。「なんで私、もうベテラン扱いなんですかね。まだ20代なのに」。新陳代謝の激しい世界で苦しむ姿が、そこにはあった。

 心身ともギリギリまで追い込まれた東京五輪の選考レースを制し、夢舞台では日本選手団の副主将を務めた。長年取材してきたアスリートが大役を担う姿に、心は震えた。気恥ずかしさもあって個人的に封印してきたフレーズを解禁すれば、「記者冥利(みょうり)に尽きる」経験だった。

 私が現場に出ていたのは昨年3月まで。こちらの一足早い“引退”を伝えると、石川からはこんな返信があった。「中学生の時に書いてもらった記事、ずっと覚えていて忘れません!ありがとうございました!」。これもまた「記者冥利に尽きる」経験だった。

 長年にわたって第一線で戦い、石川のインスタグラムの言葉を借りれば、「自分の中ではやり切った」末の現役引退。こちらこそ、素晴らしいプレーの数々、ずっと覚えていて忘れません。ありがとうございました!

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