【羽生結弦 メダリスト会見(1)】苦悩の末に「自分のためにも競技を続けていいのかな」

[ 2020年12月27日 13:58 ]

男子フリーで圧巻の演技を披露した羽生結弦(撮影・小海途 良幹)
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 フィギュアスケート全日本選手権の男子で5年ぶり5度目の優勝を果たした羽生結弦(ANA)は26日のフリー後、メダリスト会見に臨んだ。

 ――今までと異なる全日本を終えてメダリストとなった今の気持ちは

 「率直にまずは、今回1人、コーチ不在ということで長い間、練習してきて。もちろん練習の間に足痛くなったりとか、精神的に悩んで苦しい日々だったりとか、そういったものはもちろん、ありました。ただ、うん、コーチ不在とはいえ、たくさんの方に支えられて、そして、練習の時からいろんな方に支えていただきました。もちろん、実際には練習のメニューとか、まあ、プログラムの構成もそうですけど、1人で考えて、1人でやってっていうことがものすごく多くて、大変だったことは大変だったと思います。ただ、それがあってこその今だと思っているので、もちろん、今の結果は素直にうれしいですけれども、なにより、こうやって自分のことを信じてくれたコーチたち、そして遠くからでも支えてくれていたいろんな方々に、感謝を申し上げたいです。本当にありがとうございました」

 ――20年はどんな年だったか

 「大変でした。でも、僕が大変だって思う気持ちは医療従事者、そして、関係者の方々、または、職を失ったり、そもそもお金が入らなかったり、生活自体が苦しくなっている方々に比べてみたら、本当にちっぽけなことで。言ってみれば、僕はスケートってことをやれている自体、うん、ほんとに恵まれているんだなって思うんです。だから、僕自身は苦しかったかもしれないけれども、少しでも、自分の演技がなんか、明日まで持たなくていいんで、もう、その時だけでもいいですし、そっから僕の演技が終わってから1秒だけでもいいんで、少しでも生きる活力になったらいいなっていう風に思う1年間でした」

 ――苦しい時期、前を向いた瞬間は

 「まあ、どん底まで落ちきって、ほんとに、あの、そうですね、まあひと言で表したいんですけど、説明が難しくて、うまく言えないかもしれないんですけど。う~ん、なんか自分がやっていることがすごく無駄に思える時期がすごくあって。まあ、いろんなトレーニングとか、または練習の方法とか。もちろん、自分自身で振り付けを考えなきゃいけないというプレッシャーだったりとか。自分自身で自分プロデュースしなくてはいけないプレッシャーとか。それがみなさんの期待に応えられるのか。そもそも4回転アクセルって跳べるのか、とか。でも、入ってくる、僕の中に入ってくる情報は、やっぱみんなすごい上手で、みんなうまくなってて、なんか1人だけ取り残されているっていうか。なんか1人だけ、ただただ、なんか暗闇の底に落ちていくような感覚があった時期があって。でも、なんかもう1人でやだって思ったんですよ。1人でやるの、もうやだって思って。疲れたなって思って。もうやめようって思ったんですけど。やっぱ、“春よ来い”と“ロシアより愛を込めて”っていうプログラムと両方やった時に、なんか、やっぱスケート好きだなって思ったんですよね。スケートじゃないと、自分は感情を出せないなって。全ての感情を出し切ることができないなって。だったらもうちょっと、自分のためにわがままになって、みなさんのためだけじゃなくて、自分のためにも競技を続けてもいいのかなって気持ちになった時が、ちょっと前に踏み出せた時ですかね。ちょうど良くどん底に落ちきって、ほんとにアクセルすら、トリプルアクセルすら跳べなくなった時期があったので。まあ、そっから比べたら、今はだいぶ成長できたのかなとかって思ったりはしています」

=(2)に続く=

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2020年12月27日のニュース