柔道“五輪内定第1号”素根輝、恩師が語る素顔…「3倍努力」娘の“欠点”は休まないことだった

[ 2020年1月29日 05:30 ]

昨年の世界選手権後に、素根と笑顔で握手をする黒岩氏
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 のどかな田園風景が広がる中にたたずむ福岡県久留米市・田主丸(たぬしまる)中学。柔道の東京五輪内定第1号となった女子78キロ超級、素根輝(19=環太平洋大)のルーツは、ここだ。中学時代に指導した黒岩浩隆教諭(57)に、素根の素顔を聞いた。

 素根の座右の銘「3倍努力」は中学時代からだった。黒岩氏は「休まないことが欠点だった」と苦笑いで振り返る。練習は常に100%。手を抜くことがなかった。

 (1)全国優勝(2)世界で勝つ(3)将来はオリンピックで金メダル。この3つの目標を中学で掲げていた。だからこそ、オーバーワークが心配になった。「一流選手になるには、心のケア、体のケアは覚えなさい」。口酸っぱく伝えていたが、指揮官にも親にも隠れて家で筋力トレーニングをするなど、なかなか分かってくれなかった。

 素根が「休む大切さ」を分かってくれたのは中学2年のころ。県大会の団体戦で優勝し、翌日は個人戦だったが黒岩氏に「腰が痛い」と伝えてきた。

 原因は練習のし過ぎ。黒岩氏は腰痛に効能があるという近くの温泉に連れて行った。ただ、その日に限って設備が不調で、温泉ではなく普通の湯だった。それなのに「先生、凄い良かったです」とニコニコして出てきた。翌日の個人戦は優勝。「本当に素直なんです。治る訳ないんだから。今でも本人は温泉と思っているかも」と笑った。

 昨年の12月28日。地元に戻ってきた素根と会食した。母校・南筑高校が休みのため「年末年始はウチ(中学)で練習するか?」と誘った。すると「今まで休まなかったから、ゆっくりしようと思います」と答えた。「本当か?と思いましたけどね。成長を感じました」と経験を重ね、休むことを覚えてくれたことがうれしかった。

 「継続は力」が指導のモットー。「頂点を目指して、初めて頂点になれると僕は思う」と素根にも勝利への執念を植え付けてきた。東京五輪に置き換えれば、金メダルを目指さない限り、金メダルは獲れないのだ。本番は現地で観戦予定。田主丸中では大会で優勝しないと、写真撮影をしないルールがある。

 「輝には“先生は一番が好きだぞ”と言いました。親には(金メダルを)かけていいけど、一番に俺のところに持ってこい、って」と黒岩氏。ジョーク交じりに、教え子の写真撮影を信じエールを送った。

 ◆素根 輝(そね・あきら) 2000年(平12)7月9日生まれ、福岡県久留米市出身。7歳から柔道を始める。田主丸中、南筑と進み、現在は環太平洋大の1年。主な戦績は19年世界選手権、グランドスラム大阪(ともに78キロ超級)で金など。得意技は大内刈り、体落とし。1メートル63、110キロ。

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