貴景勝ケガの巧妙 窮地でヒラリ右膝故障経て得た柔軟性 大関復帰へ白星発進

[ 2019年9月9日 05:30 ]

大相撲秋場所初日 ( 2019年9月8日    両国国技館 )

大栄翔(右)を突き落としで破る貴景勝(撮影・郡司 修)
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 関脇転落から1場所で大関復帰を目指す貴景勝(23=千賀ノ浦部屋)は白星発進した。鼻血を流しながら気迫のこもった激しい相撲を展開。バランスを崩すピンチも右足を使ってしのぎ、激戦を制した。右膝の不安も、約4カ月のブランクも感じさせない内容で、大関復帰条件となる10勝以上へ順調に滑り出した。

 全ての不安を一蹴した。大栄翔を追い込んだ貴景勝は、体勢を崩しながら横へ跳び、何とか右足で踏ん張った。はたかれても膝を使ってピンチ脱出。「ケガする前だったら負けていた。これが今場所の違うところ」。瞬発力を意識していた以前は、あえて硬い状態にしていた筋肉を、今回はほぐして柔軟性を高めた。それが、復帰初日で生きた。

 驚かせたのはそれだけではない。攻め込まれたが、押し返して距離を取ると、一瞬で体を開いて突き落とし。場所前の関取衆との実戦稽古は15番だけで、相撲勘を不安視する声もあったが、最後は冷静に反応。「相撲できる喜びを感じながらやろうと思ったけど、始まったらあまり覚えていない」。幼少期から体に染み込ませてきた相撲力を、そう簡単に失うわけがなかった。

 全休した先場所。名古屋の病院で診察を終えると「(右膝)半月板に不具合があった」と打ち明けた。痛めていたじん帯はほぼ完治していたが、新たに半月板のズレが発覚。「気合で乗り越えられないのが膝だと思った」。座り方、歩き方を意識して治療に努め、帰京後は母校・埼玉栄高の寮に住み込みで膝専門のトレーナーの指導の下でリハビリに専念。食事やサプリメントも見直す徹底ぶりで「やることはやった。これで駄目だったら仕方ない」と言えるまでストイックな日々を送った。

 締め込みは、初優勝した昨年九州場所まで使っていた紫に戻した。「大関をつかむ前の自分を少し思い出せたら。もっと昔の自分に戻って。昔の自分があって、今の自分がある」。常に気持ちで戦ってきた男らしく原点回帰し、闘争心を燃やした。人事を尽くして迎えた秋場所初日。「白星につながってくれて良かった。また明日に向かって頑張っていきたい」。復活の扉が開かれた今、その勢いが止まることはない。

 【貴景勝復活までの歩み】
 ▼19年5月15日 新大関として臨んだ夏場所4日目の御嶽海戦で右膝じん帯を損傷し、5日目から休場。
 ▼同19日 8日目の碧山戦で再出場も、立ち合いではたき込まれ9日目から再休場。
 ▼同29日 母校・埼玉栄高の寮に住み込み6月20日までリハビリ。 
 ▼6月25日 千賀ノ浦部屋で稽古再開。
 ▼7月2日 幕下以下の力士相手に相撲を取る稽古を再開する。
 ▼同4日 取組編成会議を翌日に控える中、稽古後、師匠の千賀ノ浦親方と4時間話し合い、名古屋場所休場を決める。
 ▼同21日 帰京。
 ▼同23日 埼玉栄高でリハビリ開始。
 ▼8月25日 千賀ノ浦部屋での稽古再開。
 ▼同26日 秋場所新番付が発表されて、関脇に転落する。
 ▼同31日 稽古総見で、関取衆と相撲を取る稽古を解禁。
 ▼9月3日 2日間の二所ノ関一門連合稽古で逸ノ城ら関取衆と合計10番相撲を取る。
 ▼同5日 秋場所前の稽古を打ち上げる。関取衆との実戦は合計15番で終える。

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