大畑氏が分析 勝ちに徹した強豪、世界に認められたがゆえの完敗

[ 2015年9月25日 09:00 ]

<日本・スコットランド>前半、2人がかりでタックルされる立川(後方はリーチ)

ラグビーW杯イングランド大会 日本10―45スコットランド

(9月23日 グロスター)
 “世界のトライ王”大畑大介氏(39=神戸製鋼アンバサダー)がスポニチ本紙に観戦記を寄せた。
【ラグビーW杯特集】

 この敗戦は、日本が世界に認められたこそだと感じました。対戦相手にここまで対策を立てられたことが果たして過去にあったでしょうか。スコットランドは初戦で南アフリカを倒した力に敬意を払い、勝つためのラグビーに徹してきました。

 特に目立ったのはリアクションの速さです。日本が攻撃を重ねても素早く起き上がって守備に戻りました。個人の強さという「点」で守るのでなく、組織的に「線」になって守ってきました。日本がボール支配率60%を筆頭にほとんどの攻撃データで強豪を上回り、何度も敵陣深く攻め込みながらも1トライに封じられたのはそのためです。

 日本が得意とするラインアウトからのモールが決まったのも前半14分の1本だけ。その後はことごとく粉砕されました。前半はハイパントを多用してミスを誘ってきたのも研究の成果でしょう。

 南アフリカ戦から中3日の疲労も感じました。奪われた5トライは、後半にバックス陣に崩されたもの。前半はスピードに対応できましたが、試合が進むにつれて最初の一歩が踏み出せなくなりました。会場の芝が前回会場より長かったこともマイナスに働きました。絡みつく上に、試合前日に雨が降ったことで重くなっていました。余計に足に疲労が蓄積する条件だったように思います。

 10月3日のサモア戦ではもう一度、組織力を結集しなければなりません。要注意なのは米国戦の勝利に貢献したSOピシ。サントリーでもおなじみのファンタジスタを中心にFBナナイウィリアムズら個人の能力に優れた選手が並びます。

 身体能力で勝る相手を封じるのは組織力しかありません。サモアは伝統的に攻撃がうまくいかずにイライラが募ると、プレーの精度が落ちるチームです。逆に我慢比べは日本が得意とするところ。南アフリカ戦のようなしつこく素早い守りで相手のペースを乱すことが勝利への条件です。もちろん、スコットランド戦で目立った反則も減らさなければなりません。

 心身のリフレッシュができれば勝てない相手ではありません。大事なのは今まで過ごした4年間に自信を持つこと。あの南アフリカを倒し、歴史の扉を開いたメンバーです。8強入りというさらなる扉を開けると信じています。

 ◆大畑 大介(おおはた・だいすけ)1975年(昭50)11月11日、大阪市生まれの39歳。京産大時代から日本代表入り。98年に神戸製鋼に入り、99、00年度の全国社会人大会の連覇に貢献。02年にはフランスのクラブチームに移籍した。03年に神戸製鋼に復帰し、初年度のトップリーグ制覇に貢献。10年に引退。W杯は99、03年に出場。日本代表58キャップ。テストマッチ通算69トライは世界記録。

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