勝みなみ JK革命(1)「自分じゃない」史上最年少ツアーV

[ 2014年12月23日 10:30 ]

史上最年少15歳293日でツアー優勝を果たしたアマの勝みなみはカップを手に笑顔を見せる

 女子高校生がゴルフ界に革命を起こした。2014年、アマチュアの勝みなみ(16=鹿児島高1年)はKKT杯バンテリン・レディースで史上最年少の15歳293日でツアー初勝利を挙げ、ワールド・レディース・サロンパス・カップでは国内メジャー最多の10バーディーを奪い、日本ジュニア選手権では大逆転優勝を飾った。スポットライトを浴び続ける天才少女にはどんなドラマがあったのか。まずはKKT杯バンテリン・レディース最終日が行われた4月20日に時間を戻す。

 残り4ホール。単独首位に立ち、2位のイ・ボミに3打差をつけていた。それでも自分が優勝するとは思えなかった。15番パー4。勝はティーショットを打ち終わった後、フェアウエーを歩きながらキャディーの宮崎令子さん(当時46)にこう打ち明けた。

 「自分じゃないみたいなんです。自分がゴルフしてるんじゃないみたいです」。7歳でゴルフを始め、数々のアマタイトルを獲得してきた天才少女が、かつて経験したことがない感覚だった。

 大会期間中は「とにかくパットがよく入った」と言う。もともと勝は精度の高いショットを武器にアマ大会で優勝してきた。パット、アプローチのショートゲームはむしろ課題と言えた。しかし、この大会では強めのタッチで次々とカップに沈め、3日間で16バーディーを奪っていた。

 「あんなにパットが入ったのは初めて。入り過ぎて怖いという感覚だった」。いわゆる「ゾーン」と呼ばれる、極限まで集中力が高まった状態に入っていたのだが、徐々に他人がプレーしているような違和感を覚え、恐怖さえ感じるようになった。14番でこの日初めてボギーを叩き一気に崩れそうな時、支えになったのが宮崎さんだった。

 会場の熊本空港CCでハウスキャディーを務める宮崎さんとは12、13年大会に続き3年連続のタッグ。母・久美さん(当時47)と同年代とあって勝は心を許していた。子供のいない宮崎さんも「笑顔が可愛くて。自分の子供みたいに思える」と話すほどだった。

 勝はラウンド中に歌を口ずさんでリラックスすることで知られるが、この日は人気映画「アナと雪の女王」の主題歌を歌っていた。宮崎さんに「(映画を)絶対見た方がいいですよ」と勧める場面もあった。そうした家族のような関係だからこそ、弱音を吐き、気持ちの整理をつけることができたのだ。

 宮崎さんは「とにかくメンタルが強い。ミスしても悔しそうなのは、打った直後だけ」と勝の精神面の強さを指摘したが、それは宮崎さんがそばにいたからでもあった。

 15番以降は我慢強くパーを重ねた。18番パー5は第3打をグリーン左のバンカーに入れてピンチを招いた。2メートルのしびれるパーパットが残ったが、迷いも、恐れも吹っ切れた勝は「絶対に入れる自信があった」という。最後まで変わらなかった強めのタッチでウイニングパットを沈めると、破顔一笑、左手で大きくガッツポーズ。歴史が変わった瞬間だった。=続く=

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2014年12月23日のニュース