尖閣余波…真央&美姫&高橋 GP中国杯派遣見送りも

[ 2012年9月19日 06:00 ]

 尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化の余波がついにスポーツ界に及んだ。日本オリンピック委員会(JOC)理事の橋本聖子日本スケート連盟会長(47)は18日に都内で行われたJOC理事会で日中関係の悪化に触れ、フィギュアGPシリーズ・中国杯(11月2~4日、上海)への選手派遣を見送る可能性を示唆した。同大会には浅田真央(21=中京大)らが出場を予定していた。不出場となれば14年ソチ五輪の会場で行われるGPファイナル(12月6~9日)への出場が絶望的となる可能性が高く、影響は大きくなる。

 選手を守る競技団体の長として、また超党派のスポーツ議員連盟に名を連ねる国会議員として、橋本会長の反応は早かった。JOC理事会で、中国国内で相次ぐ反日デモに関する情報収集の必要性を訴えた同会長は、11月に上海で行われるGPシリーズ・中国杯の派遣について「この状況だと選手は送り込めないですよ。状況を確認して、23日の(スケート連盟の)理事会、評議員会までには何らかの判断をしたい」と話した。

 中国国内のデモは暴徒化しており、現地の日本企業や在留邦人にも被害が出ている。その影響がついにスポーツ界に及んだ。この日開幕したバドミントンのヨネックス・オープン・ジャパンでは、中国選手全員の不参加が決まった。一方、日本トライアスロン連合は、23日に山東省の威海(ウェイハイ)で行われるアジアロングディスタンス選手権への6選手の派遣を取りやめた。同連合の大塚真一郎専務理事は「先週末、主催者から“安全が保障できない”というメールが届いたので、昨夜決定した。屋外での競技だけに、守ってもらえるか分からない」と危機管理に配慮した苦渋の選択であることを明らかにした。

 橋本会長も「現地雇用などの社会貢献なんてことも関係なく、日本の企業が襲われている。中国政府も(デモを)抑えきれていないようにみえる」と話し、選手の安全第一を強調した。一方で、今冬は14年ソチ五輪を控えた冬季競技にとっては重要なプレシーズンであることも分かっている。

 中国杯には浅田だけでなく、安藤美姫(24=トヨタ自動車)、高橋大輔(26=関大大学院)も出場予定。日本の中心選手が顔をそろえるだけに、不参加となれば影響は大きい。通常通り大会が行われれば、ソチで開催されるGPファイナル進出の可能性は事実上閉ざされる。“プレ大会”でリンクを確認できないことは、五輪本番への影響も懸念される。同会長は「日本が派遣しない時に他の国の選手が(GPシリーズの)ポイントを取るのはどうか。国際(スケート)連盟とも話さなきゃいけないと思っている」とした。

 デモが沈静化しなければ、さらに多くの競技で影響が出ることが懸念される。「スポーツ議連としても政府に働きかけなければいけないこともあるが、まだスポーツまで気が回らないのが現実だと思う」と話した橋本会長の表情は最後まで険しかった。

 ▼GPファイナル 6大会行われるGPシリーズの各大会の1位に15点、2位13点、3位11点、4位9点、5位7点、6位5点、7位4点、8位3点とポイントが与えられ、獲得ポイントの上位6選手がファイナルに出場する。通常、有力選手は2試合出場するため、昨季のファイナル進出ラインは男女ともに24点。出場が1試合だけになれば、優勝しても15点止まりでファイナル進出は絶望的になる。

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2012年9月19日のニュース