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グループリーグ展望 W杯

A組展望 カタール旋風なるか


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 【A組:カタール、エクアドル、セネガル、オランダ】2大会ぶりの出場となるオランダが、戦力で頭一つ抜けている。初出場のカタールが入ったこともあり、いずれのカードもW杯で初対戦という唯一の組となった。

 オランダは今大会後に退任する名将ファンハール監督の下、3バックの戦術が板についてきた。世界屈指のセンターバック、ファンダイクが要となるDF陣の顔触れは豪華。F・デヨングが攻守のかじ取り役を担い、決定力のある前線のデパイらを生かす。

 オランダを脅かすのがアフリカ王者セネガル。GKのE・メンディやクリバリが支える守備は堅く、地力は十分。8強入りした2002年日韓大会のように大暴れをする可能性を秘める。身体能力に優れる攻撃陣も魅力だが、今月に右脚を負傷した大黒柱マネの回復具合は気掛かりだ。

 カタールは旋風を起こせるか。自国開催に向けて国を挙げた強化に取り組み、スペイン流の育成で若手を伸ばしてきた。開催国の活躍は大会の盛り上げに影響する。エクアドルとの開幕戦が試金石となる。

 エクアドルは出場資格をめぐる騒動が一段落した。20歳のインカピエ、エストゥピニャンが起点となる左サイドからの攻めは鋭い。堅守速攻を生かして格上をどれだけ苦しめられるか。(時事)

B組展望 イングランド不安も


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 【B組:イングランド、イラン、米国、ウェールズ】前回4強のイングランドは昨夏の欧州選手権で準優勝。欧州予選は8勝2分けの無敗で突破した。順当ならB組の中心となるが、今年に入って元気がない。6、9月の欧州ネーションズリーグではハンガリーに2敗。ドイツ、イタリアにも勝てず、白星のないまま下部リーグ降格が決まった。

 ケーン、スターリングを擁する攻撃陣は強力だが、右サイドバックのウォーカーら人材豊富だったポジションで故障者が相次ぐなど、不安要素を抱えたまま開幕を迎える。

 欧州予選プレーオフを勝ち抜き、64年ぶりに出場するウェールズはエース、ベールの調子がカギを握る。W杯史上初の「英国ダービー」となるイングランドとの最終戦は大一番。縦に速い攻撃で台風の目となれるか。

 10、14年大会で16強の米国は2大会ぶりの出場。9月の国際親善試合では日本に0―2で敗れ不安を残したが、カナダ、メキシコと共催する次回大会に向け、弾みとなる結果を残したい。

 アジア一番乗りで本大会出場を決めたイランは、予選後に直近2大会連続で指揮を執ったケイロス監督が復帰した。9月にはウルグアイを1―0で撃破。悲願の1次リーグ突破へ、勢いを持ってイングランドとの初戦に臨む。(時事)

C組展望 アルゼンチン揺るがず


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 【C組:アルゼンチン、サウジアラビア、メキシコ、ポーランド】本命アルゼンチンが頭一つ抜けた存在だ。エースのメッシは5度目のW杯で悲願の優勝に挑む。注目の2番手争いは、7大会連続で1次リーグを突破しているメキシコが優勢。世界屈指のFWレバンドフスキを擁するポーランドにもチャンスがある。

 アルゼンチンは昨年の南米選手権で11大会ぶりの優勝を果たし、今年6月にはW杯出場を逃した欧州王者のイタリアに快勝。短いパスを駆使して攻め上がり、メッシが攻撃の中心として機能する。La・マルティネスら若手も成長し、メッシ頼みの状況から脱却。優勝候補の一角は攻守に隙がない。

 勝ち抜き方を熟知しているメキシコは、前回ロシア大会初戦で強豪ドイツを撃破して注目を浴びた。守備は安定しているが、予選14試合で17ゴールと決定力に不安が残る。7大会連続で敗退している16強の壁を越えたい。

 ポーランドのレバンドフスキは、昨季まで5季連続でドイツ1部リーグで得点王に輝いた。今年1月に就任したミフニエビッチ監督は、4年前は不発に終わった絶対的エースを生かす形を構築できるか。メキシコとの初戦がカギを握る。

 サウジアラビアは中東の地の利を生かしたい。国内組で構成する連係面の強みを生かし、1994年大会以来の16強を目指す。(時事)

D組展望 フランスに不安材料


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 【D組:フランス、オーストラリア、デンマーク、チュニジア】史上3カ国目の連覇を目指すフランスは前回メンバーのエムバペとグリーズマンに加え、34歳でバロンドールを初受賞したベンゼマが2大会ぶりに選出。得点力は増したが、守備陣を中心に故障者が続出し、不安材料を抱える。

 前回優勝の原動力となった中盤のポグバとカンテがけがで欠場。DFでも、負傷したキンペンベは回復が遅れるとして不参加に。バランも故障を抱え、状態がどこまで戻るか不透明だ。共にレアル・マドリードでプレーするチュアメニ、カマビンガら若手が中盤で起用されそうだが、デシャン監督の采配も問われる。

 勢いではデンマークが王者を上回る。欧州ネーションズリーグで今年フランスに2勝。攻撃の柱エリクセンは、チームが4強入りした昨夏の欧州選手権で試合中に心停止により倒れたが復活を果たした。若手攻撃陣も台頭し、守備ではGKシュマイケル、ケアーが経験豊富だ。

 順当なら2強の突破で決まりそう。チュニジアとオーストラリアは一角を崩せるか。チュニジアは快勝した6月の日本戦のような組織的な戦いで対抗したい。豪州は大陸間プレーオフを経て出場。前回大会もフランス、デンマークと1次リーグで対戦。最下位に終わった雪辱を期す。(時事)

E組展望 日本、初戦に命運


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 【E組:スペイン、コスタリカ、ドイツ、日本】7度目の出場で初めて欧州の優勝経験国に挑む日本は、厳しい戦いが予想される。冨安(アーセナル)ら負傷者を多数抱える状況で、総合力が問われる。

 優勝4度を誇るドイツとの初戦に1次リーグ突破の命運が懸かる。日本は過去、黒星発進となった3大会でいずれも決勝トーナメント進出を逃した。勝ち点1以上を手にできれば道は開けてくる。

 ドイツは攻守に洗練されているが、日本も相手に負けないプレスで組み立てを揺さぶりたい。開始早々にPKと退場者を誘って勝った前回のコロンビア戦の例もある。伊東(スタッド・ランス)らのサイド攻撃は通用するはずで、序盤から積極性を見せることが大事だ。

 続くコスタリカ戦は勝ち点3が必須。鎌田(アイントラハト・フランクフルト)ら攻撃陣が相手の堅守をどう打ち破るか。最後に当たるスペインのボール保持力は群を抜くが、得点力はドイツほどではない。東京五輪で対戦した経験も生かし、少ない好機を仕留めたい。

 ドイツ、スペイン戦は、うまく守れていれば日本のペース。後半勝負に持ち込むのが理想だ。  32チーム制の現行方式となった1998年大会以降、優勝経験国が2チーム以上同組となった場合、複数が勝ち上がったケースはない。ドイツ、スペインの突破は有力だが、波乱の可能性はある。(時事)

F組展望 ベルギー、主力に不安


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 【F組:ベルギー、カナダ、モロッコ、クロアチア】前回3位のベルギーと、同準優勝のクロアチアが実力的に抜けている。お互い2連勝で16強入りを決め、直接対決を迎えるのが理想だろう。モロッコとカナダは「2強」から勝ち点を奪い、最終戦に決着を持ち込めば1次リーグ突破の可能性も出てくる。

 ベルギーの懸念材料は左太ももを負傷しているFWルカク。マルティネス監督が「決勝トーナメントには間に合う」と話すように、1次リーグは出場できない見通し。レアル・マドリードで出場機会が激減しているE・アザールもピーク時とは程遠い状態にある。短い準備期間で本調子に戻るのは難しく、メルテンスら他のアタッカーを中心に戦うことになりそうだ。

 クロアチアは司令塔モドリッチを筆頭に、主力に大きな問題は見当たらない。鼻骨を骨折したDFグバルディオルも保護マスク着用でのプレーが可能となった。胸をなで下ろしたのはカナダも同じ。今月、脚を負傷したDFデービスは2週間の離脱にとどまり、開幕には間に合う見込みだ。

 モロッコはハリルホジッチ前監督との不和が原因で代表を離れていたFWジエシュが復帰したが、新監督の手腕は未知数。番狂わせを起こすことができるか。(時事)

G組展望 し烈な2位争い


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 【G組:ブラジル、セルビア、スイス、カメルーン】ブラジル、スイス、セルビアは前回ロシア大会に続いて同組に入る。戦力と実績で頭一つ抜けているのはブラジルで、1位通過が確実視される。エースのネイマール、新星ビニシウスら個人技に長けたFW陣がそろうだけでなく、2大会連続で指揮を執るチチ監督の下、状況に応じて戦い方を選べる完成度の高いチームとなった。

 注目は残り3チームの2位争い。前回決勝トーナメントに進んだスイスが有力か。守備が安定しており、得点力が伴えば突破は近づく。対抗は「ピクシー(妖精)」ことストイコビッチ監督が率いるセルビア。ブラホビッチ、A・ミトロビッチら質の高い攻撃陣が引っ張る。

 両国には因縁がある。4年前の対戦で、スイスのジャカとシャキリが得点を決めた後、政治的パフォーマンスを行い、罰金処分を受けた。今回は最終戦で激突。どういう状況で試合を迎えるか。

 カメルーンはDFの要としてワールドカップ(W杯)に4度出場したレジェンド、ソング監督が組織的な守備を構築した。攻撃は個人技頼みで、チュポモティング、アブバカルに懸かる期待は大きい。スイス、セルビア相手に2戦目まで勝ち点を積み上げられれば、8強入りした1990年イタリア大会以来の1次リーグ突破が見えてくる。(時事)

H組展望 「2強」が激突


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 【H組:ポルトガル、ガーナ、ウルグアイ、韓国】ポルトガルとウルグアイの1位争いが予想される。両国の激突は2試合目。初戦でポルトガルはガーナ、ウルグアイは韓国を下し、順当に勝ち点3を奪った上で注目の一戦に臨みたい。

 ポルトガルは5度目の出場となる37歳のエース、ロナルドが躍進のカギ。フェルナンデスら世界的なスターと共に初優勝を狙う。ジョタの欠場は痛いが、チーム力は同組随一。前回大会の決勝トーナメント1回戦で競り負けたウルグアイに雪辱できれば、悲願に向けて波に乗れるだろう。

 ウルグアイは35歳のスアレスを中心に経験豊富なベテランがチームを引っ張る。昨年就任したアロンソ監督は15年続いたタバレス体制を引き継ぎ、2トップを組むカバニらも健在。若手も台頭し、「2強対決」は激戦となりそうだ。

 潜在能力を考えればガーナと韓国にも割って入るチャンスはある。ガーナはスペイン代表経験もある長身FWウィリアムスが、祖国の代表でプレーすることを決断。インパクトに欠けた前線に強力な武器が加わり、顔面骨折で手術を受けたエース孫興民が気がかりな韓国に比べれば勢いがある。

 韓国はかつてJリーグでプレーした黄義助ら頼もしいアタッカー陣がそろうものの、孫興民の状態がチームの浮沈を左右することになるだろう。(時事)