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史上初の快挙!19歳“大工の遠藤”大仕事7位

[ 2010年2月16日 06:00 ]

男子モーグル決勝で雄たけびを上げながらゴールする遠藤

 男子モーグル決勝で、19歳の遠藤尚(忍建設)が25・38点で7位と健闘し、日本男子モーグル史上初の入賞を果たした。五輪初出場の遠藤は予選から迫力満点の滑りで8位。決勝でも、得意のエアだけなら4番手の得点をマークし、14年ソチ(ロシア)五輪のエース候補に名乗りを上げた。昨季の世界選手権デュアルモーグル銀の西伸幸(24=白馬ク)が9位で、附田雄剛(33リステル)が17位。尾崎快(22=早大)は予選24位で決勝に残れなかった。

 守るものが何もないことが、どれだけ強いか。チーム最年少、19歳の遠藤が証明してみせた。1メートル78の長身で大きなエアが武器。第1エアで体の軸を斜めにして宙返りするDスピン、第2エアでは高さ十分のバックフリップを豪快に決め、予選8位。「一発やってやる」と気合を込めた決勝でも会心の滑りを見せ、レース進行中にトップ3だけが許されるシートにも座った。日本男子初の入賞だったことを知らされると「本当ですか?ありがとうございます」とはにかんだ。
 前日は女子で同い年の村田が8位入賞し「無言の重圧を感じていた」という。W杯の最高成績は10位。だが「五輪マジックだった」というこの日こそ、遠藤の潜在能力が覚せいした日だった。日本のモーグルのメッカ猪苗代育ち。98年長野五輪の直後、猪苗代で開かれたW杯を学校を休んで見に行き「かっこいい」と思った。小5で競技を始めると、クラブ「リステルジュニア」でのめり込んだ。ラハテラ・コーチいわく「世界で戦える才能」。14年ソチ五輪を目指していたが、W杯遠征に同行していた今季、2人の先輩が相次いで故障。巡ってきたチャンスを、生かし切った。
 まじめで律儀(りちぎ)な男でもある。昨春、猪苗代高卒業時に声をかけてくれたのは宮城県内の忍建設。「五輪に出ることが会社への恩返し」が口癖で、猪苗代での練習時以外は社長の自宅に住み込みサラリーマン生活を送る。入社しても競技に専念するアスリートが多い中「型枠大工」として家を建てている。先輩として慕う上野修がケガで五輪出場を断念すると「上野さんが五輪で着用しようとしていたウエアを」とメーカーに要望。この日は実際に着て快走した。
 エアだけなら優勝したビロドーとも0・2点しか差がない4位。タイムも5位。だが、ラハテラ・コーチが叩き込むターンは10位。伸びしろはまだ無限にある。「次は勝ちにいきたい」。入賞という歴史をつくった19歳は、4年後には次代のエースとして「守るものがある」強さを見せる順番が回ってくる。

 ◆型枠大工 ビルやマンションなどの建設で「鉄筋コンクリート」や「鉄骨コンクリート」の工法を用いる際に、コンクリートを流し込むための型枠を組み立てる大工のこと。鉄筋や鉄骨で建物の骨組みを作る作業や、骨組みの周りを覆うパネル板の細かい加工を行うため、大工の中でも高度な技能が必要な専門職。技術は高層建築物や住宅の建設現場だけでなく、橋やトンネルなどコンクリートを使うあらゆる工事において必要とされる。

 ◆遠藤 尚(えんどう・しょう)1990年(平2)7月4日、千葉県船橋市生まれの19歳。3歳で福島県猪苗代町に引っ越し。小4時に猪苗代で開催されたW杯を観戦し、小5でリステルジュニア入り。猪苗代高2年の07~08年シーズンからW杯参戦。翌年は全日本選手権2位。高2、3年時は全日本ジュニアで史上初の連続3冠を達成。今季開幕戦となった12月のスオム(フィンランド)大会の10位がW杯最高成績。1メートル78、72キロ。趣味は釣り。

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2010年2月16日のニュース