【NHKマイルC】テトラドラクマを見守ってきた女性厩務員に幸運ドラマを

[ 2018年5月4日 05:30 ]

NHKマイルCで戦列復帰するテトラドラクマを担当する黒川厩務員
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 【競馬人生劇場・平松さとし】新体操に没頭していた少女は、ある日、父が見ていた競馬が何げなく目に入った。すると鹿毛の牡馬が抜け出す瞬間、心が震えた。

 「スーパークリークの勝った天皇賞でした。春か秋かも覚えていないけど、感動したのは忘れられません」

 自分で競馬学校の存在を調べ、受験した。1度不合格になると乗馬を始め、2度目の受験。合格すると入学までの間に牧場へ行き、さらに勉強を重ねた。

 95年に競馬学校を出ると美浦で持ち乗り厩務員となった。当時は今以上に女性が珍しい時代。からかわれることもあったが、「馬が好きなので辞めようと思ったことはありません」と言う。

 一つ勝つことの難しさも知り「“未勝利戦を勝っただけでなぜ?”と言われるくらい泣いたこともありました」。

 そんな彼女が「凄く大人しい牝馬」に出合ったのは昨年の夏。3戦目で未勝利戦を勝つとフェアリーS6着を挟み、クイーンCを優勝。美浦・小西一男厩舎で田辺裕信が乗ったテトラドラクマだった。

 「この世界に入ったばかりの頃、先輩の厩務員に“今のために何をやるかではなく、明日のために何ができるかを考えなくてはいけない”と言われました」

 そう語るのが同馬を担当する黒川麻央厩務員だ。

 疲労が残って桜花賞を回避したテトラドラクマだが、今週のNHKマイルCで戦列に復帰する。明日のために携わってきたであろう彼女に幸運が訪れることを期待したい。(文中敬称略)

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2018年5月4日のニュース